研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108707
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾仲 宏康 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80315829)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 生合成 / 放線菌 / 抗生物質 / 遺伝子発現 / チオペプチド / RiPPs / リボソーム合成 |
研究概要 |
本研究は、これまで放線菌ゲノム内に眠ったままであるチオペプチド生合成遺伝子群をゲノムマイニングで探し出し、遺伝子組換え技術を用いて実験室環境下で強制的に発現させるシステムを構築し、実際にゲノム解読によって存在が明らかになっているが、生産が確認されていない新規チオペプチドの強制発現を行うことを目指した。放線菌Streptomyces lactacystinaeusのゲノム解読の結果、本ゲノム中に6個の遺伝子だけからなる、これまでに類を見ない最小単位のチオペプチド生合成遺伝子クラスーを見出した。S. lactacystinaeusがチオペプチド系化合物を生産しているという報告はこれまで無かったため、本チオペプチド生合成遺伝子群は、通常は発現していないサイレント遺伝子であることが予想された。そこで、異種発現法を用いて、本遺伝子群を別種の放線菌であるStreptomyces lividansで異種発現させ、新規チオペプチド化合物ラクタゾール類のの化学構造を決定した。 ラクタゾール類は14、16、17個のアミノ酸残基をベースにした3種の類縁体lactazole A、 lactazole B、 lactazole Cからなる化合物群で、チオペプチド化合物の典型的な特徴であるピリジン環を要とする大員環を形成しアゾール環やデヒドロアラニンなどが分子内に存在する構造を有していた。しかしながら、大員環のサイズや構成アミノ酸の種類、ピリジン環の置換基構成が既知のチオペプチドとは異なっており、新しいタイプのチオペプチドであることが明らかとなりました。大員環のサイズについては従来のチオペプチドは9、10、12個のアミノ酸で大員環を形成するチオペプチドが知られていましたが、11個のアミノ酸で構成される32員環を有するチオペプチドはラクタゾールが初めての例であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は放線菌ゲノム内で眠っているチオペプチド生合成遺伝子を覚醒し、その産物であるラクタゾールの同定に成功し、その結果をChemistry & Biology 誌にて発表することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度はチオペプチド生合成遺伝子群発現活性化変異株の作製に力を入れたい。 発現していないチオペプチド生合成遺伝子群を実験室の培養条件においても発現が可能になるような変異株の作出もしくは、発現が可能になる培地条件を見出す戦略で、眠っているチオペプチド生合成遺伝子を覚醒させることを目指す。 材料には主に3つのチオペプチド非生産菌の遺伝子群・Streptomyces sp. TP-A0584のチオペプチド生合成遺伝子群及びランチビオティックス生合成遺伝子群、Frankia sp. CcI3のチオペプチド生合成遺伝子群(Francci4193~Francci4207)を使用する。これらはS. lividansを宿主にした異種発現においても通常の培養では生合成遺伝子群は発現しない事が確認されている。 そこで、これら発現が抑えられている生合成遺伝子のプロモーター領域をクローニングする。次にビオラセイン生合成遺伝子をレポーター遺伝子としてそのプロモーター下流につないだ発現可視化プラスミドを構築し、生産菌及びS. lividansに導入する。プロモーターからの転写があれば、青色色素であるビオラセインが生産され青色のコロニーを形成する。形質転換した株を紫外線もしくはNTG等で変異処理し、青色色素を生産する株を選択すれば、その変異株はチオペプチドの生産が期待できる。
|