本研究は、これまで放線菌ゲノム内に眠ったままであるチオペプチド生合成遺伝子群をゲノムマイニングで探し出し、遺伝子組換え技術を用いて実験室環境下で強制的に発現させるシステムを構築し、生産が確認されていない新規化合物の強制発現を行うことを目指した。 当初計画していたGUSによる発現可視化ベクターの構築を行ったが、GUSレポーターの発現が弱いため、放線菌では上手く機能しないことが明らかとなった。そこで、レポーター遺伝子をChromobacterium violaceum由来のビオラセイン生合成遺伝子とすることにした。ビオラセインはTrpを前駆体とした青色色素である。生合成遺伝子は5個、7 kbからなるが、本遺伝子群をレポーターとして用いた発現可視化ベクターを構築したところ、遺伝子発現の可視化に成功した。そこで、Streptomyces griseus IFO13350のチオヘプチド生合成遺伝子群(SGR4408~SGR4423)及びFrankia sp CcI3 のチオペプチド生合成遺伝子群 (Francci4193~Francci4207)に加え、放線菌Streptomyces sp. TP-A058のゲノム中に新たに見出されたランチペプチド生合成遺伝子等についてプロモーター発現条件を本可視化ベクターを用いて解析した。その結果、Streptomyces griseus IFO13350のチオヘプチド生合成遺伝子群(SGR4408~SGR4423)及びFrankia sp CcI3 のチオペプチド生合成遺伝子群 (Francci4193~Francci4207)については各種培地を試したが、発現が確認できなかった。Streptomyces sp. TP-A0584由来ランチペプチドに関しては発現が確認できたために、化合物の取得を行っている。
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