研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108710
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森田 洋行 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20416663)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プレニル基転移酵素 / NMR / 立体構造解析 / 酵素工学 |
研究概要 |
インドールプレニル基転移酵素(IPT)は、糸状菌が生産するエルゴットアルカロイドやテレキノンアルカロイドの生合成においてインドール骨格部位をジメチルアリル化する可溶性酵素群である。本研究では、CdpNPTと個々の基質との相互作用部位、基質認識の共通部位や基質毎の特異的認識部位を、NMRによりハイスループットスクリーニングする事で、基質結合やプレニル化反応における動的構造変化を解明する事を目的に、溶液NMRによる信号帰属を試みた。 CdpNPTは溶液中で二量体を形成し、約92 kDaの高分子量タンパク質となる。分子量の制約によるNMR信号の重複と幅広化の減少を目的に、残基特異的部位特異的安定同位体標識試料を調製した。Lys側鎖に、13C安定同位体標識したメチル基を選択的に修飾導入した試料、およびAla側鎖メチル基を安定同位体標識した試料を調製し、920 MHz NMRを用いて13C-HSQCスペクトルを測定した。また、15N全標識CdpNPT 試料の15N-HSQCスペクトルを測定した。その結果、Lys側鎖を修飾した試料の信号は、当初予測していたより分散度が低く、信号の大幅な重複が観測された。一方、Ala残基側鎖メチル基を標識した試料ではAla残基数が多いため、信号の重複が観測された。また、15N-HSQCの測定も試みたが、CdpNPTは2量体を形成し、見かけの分子量が大きいため、TROSY法を用いても信号の広幅化が生じ、良好な信号の取得は困難であることが判明した。そこで、この問題の解決のため、単量体で安定化する変異体の作成を試みた。その結果、77番目のヒスチジンをセリンに置換した変異酵素が単量体と二量体で平衡状態を保っていることが確認された。さらなる変異の導入またはNMR測定条件の検討により、CdpNPTの基質結合やプレニル化反応における動的構造変化の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画においては、溶液NMR解析により、CdpNPTの基質結合やプレニル化反応における動的構造変化を解明する事を主たる達成目標としていた。CdpNPTが溶液中で二量体を形成して約92 kDaの高分子量タンパク質となるため、分子量の制約により、NMR信号の重複と幅広化が見られたが、現在では、その対策として、CdpNPTの単量体化にも成功しつつあり、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CdpNPTの単量体化およびNMR測定条件の検討をさらに進める。また、同時に、CdpNPTと個々の基質との複合体結晶構造の取得にも取り組み、両解析法を用いてCdpNPTの基質結合やプレニル化反応における動的構造変化の解明に取り組む。一方、本研究の最終目標のひとつに機能改変酵素の創出があるが、NMRシグナル、および、先行研究において動的変化を示していると考えられるシグナルや二次構造が確認されている。CdpNPTのNMR解析とX線結晶構造解析を進めると同時に、これらの情報をもとに変異酵素を作成し、機能改変型酵素の創出を目指す。
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