研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108711
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
片岡 正和 信州大学, 工学部, 准教授 (90332676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 接合伝達 / 放線菌 / 大腸菌 / 枯草菌 / 納豆菌 / 種間接合 |
研究概要 |
平成25年度は、放線菌線状プラスミドSAP1の接合を用いた生合成遺伝子クラスターの簡易操作をさらにブラッシュアップする予定であった。しかし放線菌中間宿主のゲノムチューニングやSAP1上への複数組み込み部位の構築などの初期計画は比重を下げて研究を行い、26年度計画の枯草菌への接合を中心に研究を進めた。 広宿主域接合系であるRP4系を用いた大腸菌から放線菌への種間結合は、初発大腸菌のゲノムチューニングと放線菌への属間接合の最適化を目標に初期計画に上げていた。これに関してはこれまで利用していた属間接合のシス領域であるoriT領域が効率的接合には短すぎることが判明し、最適な長さのoriTを再定義した。このoriTの長さによる影響は大腸菌間の接合では見られない系であった。また、主たるRP4系の宿主菌としてゲノムにRP4のtra遺伝子群を有するS17-1系のゲノムを相同組換えで操作し、構造上株の不安定要因であったMuファージ部分を欠失し、さらに放線菌の制限修飾系を部分回避するためにdcm遺伝子の破壊も行った。なお、これらの遺伝子破壊は連携研究者である奈良先端大の森浩禎教授の下で実施したものである。 また、放線菌の初期計画が計画班で達成されたため、平成26年度計画であった枯草菌の生合成マシナリー化を目指した、大腸菌から枯草菌への接合系の開発を開始した。現在まで定量的データで語られたことのない枯草菌への接合伝達を確認し、系の最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放線菌におけるSAP1のベクター化に関しては、既にSAP1の供給元であり、本領域研究計画班の池田研究室で大きな進展を遂げている。申請者の研究室でもいくばくかの成果は上がって来たが、池田研ほどの成果を上げるには至っていない。この点で達成度は低かったと判断する。しかし計画班が先行した結果であり、申請者は計画班の研究協力者でもあり、サブグループとしては喜ばしい結果であった。 大腸菌から放線菌への種間接合に関しては、現在までに知られていなかった効率化因子や、S17-1などのtra領域ゲノム組み込み株をつかう事の是非など、現在まで報告のなかった事実が明らかになってきており、また、Mu欠損による株の安定性の向上などが見られた。ただし、S17-1が持つ初発宿主としての不都合も同時に明らかになってきており、より最適な系を求める探索を始めている。この項目に関しては、未知の事実も明らかになっており、普通の達成度と判断した。 枯草菌への接合伝達系はこれまでほとんど知られておらず、定量的データや標準プロトコールもない状態からはじめ、定量的な比較データをだし、接合実験のプロトコールも固定化できた。この部分関しては初期計画よりも遙かに進んだと判断した。これらの結果よりやや標準よりは遅れているという判断を下した。
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今後の研究の推進方策 |
放線菌に関しては計画班が世界最高レベルにまで系をブラッシュアップしているため、大腸菌からの接合伝達に注力する。特にS17-1でなく、RP1系やR6K系を用いた系を開発する準備にはいっている。 枯草菌への接合伝達をプロコール化できたことは、納豆菌など自然形質転換能をもたない枯草菌の近縁種への遺伝子導入、しかも巨大な遺伝子の導入方法確率の可能を示している。これらの自然形質転換能を持たない株への接合伝達系をさらに開発する。また、プロトコール化した手法に関しては投稿準備中であり、最終年度中には論文として発表する予定である。
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