• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

放線菌由来特異二次代謝生合成マシナリーの解析および人為制御による有用分子生産

公募研究

研究領域生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御
研究課題/領域番号 25108718
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

研究機関広島大学

研究代表者

荒川 賢治  広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (80346527)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードポリケチド / 生合成 / 放線菌 / シグナル分子 / ピロロキノリンキノン / アゾキシアルケン
研究概要

本年度は以下の項目について解析した;(1)LC生合成におけるモジュラー・反復混合型PKSの解析,(2)二次代謝誘導シグナル分子SRBの生合成機構解析,(3)分子多様性を創出する二次代謝生合成酵素の機能解析,(4)人為制御による潜在的二次代謝産物の活性化および生合成マシナリーの解析。
(1)LCポリケチド生合成におけるモジュール・反復型ポリケチド生合成に関して、LkcF-KR1ドメインの還元立体性を司るアミノ酸残基の点変異を行った。この変異株はLC非生産となったものの目的の非還元中間体の蓄積は認められなかった。現在は生合成後期の還元反応を司るLkcF-KR2ドメインの点変異株構築を行っている。
(2)S. rocheiのLC,LM生合成を誘導するシグナル分子SRB1,SRB2の生合成に関与するP450遺伝子srrO (orf84)の変異株から6'-デオキソSRBsの蓄積を見いだした。これはSrrOが6'位の酸化反応に関与することを示唆している。本タンパク質を大量発現し、合成により調製した6'-デオキソSRB1との反応に賦したところ、基質変換が認められた。
(3)Orf23を放線菌で発現させたところ、タンパク量は少なかったもののHis-tag融合タンパクとして取得できた。本酵素を用いて基質の変換反応を行ったところ、ランカサイジノールが効率よくランカサイジンCへと変換されることを見いだした。
(4)制御遺伝子などの多重遺伝子変異株から、通常培養で生産しないアゾキシアルケン型化合物の蓄積を見いだした。本化合物の生合成遺伝子クラスターはA03班との共同研究により推定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績で記載した(1)であるが、LkcF-KR1ドメインの還元立体性を司るアミノ酸残基の点変異は立体選択性の改変にはつながらず、酵素活性の低下にとどまる結果であった。
(2)に関しては、SrrOのSRB生合成への関与を示唆する結果が得られた。(3)に関してもOrf23がランカサイジノール→ランカサイジンCへの関与を見いだすことが出来、多様な生合成酵素の機能解析の一歩を踏み出すことが出来たと考えている。しかし、現状ではいずれの場合もタンパク量が少なく、純粋かつ十分量なタンパクが得られていない。これらの成果を報文化するに当たり、タンパク取得の効率向上が肝要であり、平成26年度に最適培養・精製条件の確立も目指す。
(4)に関しては、新規化合物ではなかったものの潜在的二次代謝クラスターの覚醒という視点では興味深い成果を得られたと考えている。とくに本化合物の生合成起源・生合成遺伝子クラスターはともに不明であるので、本研究を推進して行く所存である。

今後の研究の推進方策

計画最終年度に当たる平成26年度は、上述の解析をさらに進めるとともに、人為制御による潜在的二次代謝産物の活性化および生合成マシナリーの解析、を中心的に取り組む予定である。
(1)に関しては、生合成後期の還元反応を司るLkcF-KR2ドメインの点変異株構築を行い、LCの特異な生合成系を解明したいと考えている。
(2)(3)に関しては、タンパク発現系の再構築に注力し、生合成酵素の生化学的諸性質を明らかにしたいと考えている。
(4)に関しては、本年度の研究で得られたアゾキシアルケン化合物の生合成起源・生合成マシナリーの解析を引き続き行っていく予定である。とくにアゾ結合の生合成に注目し、遺伝子破壊株からの生合成中間体の取得、生合成酵素とのin vitro反応を有機的に組み合わせ、先駆的な成果を導き出すよう研究遂行する所存である。
本研究と独立して、本菌の染色体塩基配列のアセンブルおよびORF解析を進めているが、100 kb以上のcontigが30本(最長Contig長; 392kb)得られ、他のcontigとあわせたカバー長は8.18Mbであった。また制御遺伝子の多重変異株において、複数の二次代謝遺伝子の覚醒にも成功し、さらに本菌における線状プラスミドが線状染色体の線状構造を維持するのに必要不可欠であることを見いだすことが出来た。これらの発見は本菌の全ゲノム解析および潜在的二次代謝クラスターの覚醒を行う上で強力なモチベーションとなっており、多面的視野から特異二次代謝生合成マシナリーの解明に貢献していくよう研究推進する所存である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち謝辞記載あり 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Genetic and biochemical analysis of the antibiotic biosynthetic gene clusters on the Streptomyces linear plasmid2014

    • 著者名/発表者名
      Kenji Arakawa
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 78 ページ: 183-189

    • DOI

      doi: 10.1080/09168451.2014.882761

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Chromosome circularization of the model Streptomyces species, Streptomyces coelicolor A3(2)2013

    • 著者名/発表者名
      Yosi Nindita, Tomoya Nishikawa, Kenji Arakawa, Guojun Wang, Kozo Ochi, Zhongjun Qin, Haruyasu Kinashi
    • 雑誌名

      FEMS Microbiol. Lett.

      巻: 347 ページ: 149-155

    • DOI

      10.1111/1574-6968.12228

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Analysis of the regulatory genes encoded on a Streptomyces linear plasmid and its application for antibiotic production2013

    • 著者名/発表者名
      Kenji Arakawa
    • 雑誌名

      Report of the Noda Institute for Scientific Research

      巻: 57 ページ: 40-41

  • [学会発表] 放線菌Streptomyces rocheiの多重変異株が生産するアゾキシアルケン化合物の生合成機構2014

    • 著者名/発表者名
      國武 博文,木梨 陽康,荒川 賢治
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] The tpg-tap gene pair of the linear plasmid functions to maintain the linear chromosome in Streptomyces rochei 7434AN42014

    • 著者名/発表者名
      Yosi NINDITA,曹 志生,志波 優,吉川 博文,荒川 賢治,木梨 陽康
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] Streptomyces rochei7434AN4株の線状染色体の塩基配列解析2014

    • 著者名/発表者名
      稲田 晋宣,曹 志生,Yosi NINDITA,片岡 憂祐,田上 道平,Alexander LEZHAVA,志波 優,吉川 博文,石川 淳,木梨 陽康,荒川 賢治
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] 赤シソからの新規I型アレルギー抑制因子の単離・同定2014

    • 著者名/発表者名
      亀井 力哉,河本 正次,荒川 賢治,平川 規子,馬場 堅治,小埜 和久
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] Manipulation of the Streptomyces regulatory network for engineering natural product biosynthesis2014

    • 著者名/発表者名
      荒川 賢治
    • 学会等名
      1st US-Japan Seminar on the Biosynthesis of Natural Products for Young Researcher
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      20140302-20140303
    • 招待講演
  • [学会発表] 放線菌線状プラスミドにコードされた抗生物質生合成クラスターの遺伝学的・生物有機化学的解析2014

    • 著者名/発表者名
      荒川 賢治
    • 学会等名
      日本農芸化学会・中四国支部第38回講演会(例会)
    • 発表場所
      香川大学
    • 年月日
      20140125-20140125
    • 招待講演
  • [学会発表] 放線菌二次代謝制御システムの解析および物質生産への応用2013

    • 著者名/発表者名
      荒川 賢治
    • 学会等名
      第65回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      広島国際会議場
    • 年月日
      20130919-20130919
    • 招待講演
  • [学会発表] 放線菌線状プラスミドにコードされた抗生物質生合成・制御遺伝子の網羅的解析および物質生産への応用2013

    • 著者名/発表者名
      荒川 賢治
    • 学会等名
      JBA発酵と代謝研究会シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学農学部
    • 年月日
      20130911-20130911
    • 招待講演
  • [学会発表] Streptomyces rocheiの多重遺伝子破壊株が生産する代謝産物の化学構造および生合成機構の解析2013

    • 著者名/発表者名
      國武 博文,平松 高広,木梨 陽康,荒川 賢治
    • 学会等名
      日本放線菌学会
    • 発表場所
      メルパルク広島
    • 年月日
      20130905-20130906
  • [学会発表] 抗生物質ランカサイジン生合成におけるピロロキノリンキノン要求性デヒドロゲナーゼの機能解析2013

    • 著者名/発表者名
      山内 佑介,薮内 優,鈴木 敏弘,木梨 陽康,荒川 賢治
    • 学会等名
      日本放線菌学会
    • 発表場所
      メルパルク広島
    • 年月日
      20130905-20130906
  • [学会発表] Analysis of the essential gene for a linear topology of the Streptomyces rochei replicons2013

    • 著者名/発表者名
      Yosi NINDITA,曹 志生,志波 優,吉川 博文,荒川 賢治,木梨 陽康
    • 学会等名
      日本放線菌学会
    • 発表場所
      メルパルク広島
    • 年月日
      20130905-20130906
  • [学会発表] 多重遺伝子変異株から単離したアゾキシアルケン化合物の構造および生合成2013

    • 著者名/発表者名
      荒川 賢治
    • 学会等名
      第9回(2013年度)生合成勉強会
    • 発表場所
      東京大学農学部
    • 年月日
      20130803-20130803
    • 招待講演
  • [学会発表] 抗生物質生合成を誘導するシグナル分子の構造・生合成と有用物質生産への展開2013

    • 著者名/発表者名
      荒川 賢治
    • 学会等名
      第5回生合成マシナリー札幌セミナー
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20130422-20130422
    • 招待講演
  • [備考] 研究室のホームページ

    • URL

      http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbiotech/5lab/index.html

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi