納豆菌を鋳型に納豆菌由来のcomQX遺伝子クラスターを有する発現プラスミドであるComQXnattoを作成した。次に、作成したプラスミドを鋳型にポイントミューテーションを行い、発現プラスミドのうちでComXnattoの54番目のトリプトファンをアラニンに置換した変異体である ComQnatto[W54A]ComXnattoをコードする遺伝子を有する発現プラスミドを作成した。それぞれを大腸菌に形質転換し、納豆菌由来の生合成酵素であるComQnattoと、ComXnattoまたは [W54A]ComXnattoを過剰発現させた。この培養液を、LC/MSを用いて分析した結果、ComXnatto 過剰発現株の培養液のみに、ファルネシル基に相当するフラグメントを有するシグナルを検出した。最終的な結果のみ述べるが、このシグナルに相当する修飾ペプチドはトリプトファンがファルネシル化されたComXnattoフェロモンであった。この結果から、修飾酵素ComQnattoは、少なくともC末端側から5番目のトリプトファンを修飾可能なトリプトファンファルネシルトランスフェラーゼであることが明らかとなり、基質が必ずしもC末端付近にトリプトファンを有している必要はないことが明らかとなった。また、ComXnattoフェロモンを添加して納豆菌を培養した場合はポリグルタミン酸の生産量が増加したが、未修飾ペプチドを添加した場合は変化しなかったため、ComXnattoフェロモンが、納豆菌におけるポリグルタミン酸の生合成を促進させるペプチドフェロモンであることが判明した。
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