研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108725
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 直樹 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90442946)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糸状菌二次代謝 / 生合成遺伝子クラスター / PKS-NRPSハイブリッド / フサリセチン / 2ndFind |
研究概要 |
本研究課題では、糸状菌PKS-NRPSハイブリッド酵素に由来するテトラミン酸ポリケチド化合物の生合成機構、特に特徴的な環構造形成に関わる酵素の同定とその生合成メカニズム解明を目的としている。研究実施計画に沿って研究を進めた結果、本年度は以下の成果が得られた。 1. フサリセチン、およびピロリジラクトン生産糸状菌のドラフトゲノム解読を行い、それぞれ40, 51 Mbの塩基配列情報を得た。二次代謝産物生合成遺伝子クラスター同定用ツール2ndFindを用いて、候補となる生合成遺伝子クラスターの探索を行った。その結果、PKS-NRPSハイブリッド酵素遺伝子を含む遺伝子クラスターをフサリセチン生産菌から1つ、ピロリジラクトン生産菌から5つ見いだすことが出来た。 2. フサリセチン生産菌Fusarium属FN080326株に唯一見いだされたPKS-NRPSハイブリッド酵素遺伝子fsa1破壊により、フサリセチンおよびその予想生合成中間体であるエキセチンの生産が消失することを確認した。これより、fsa1を含む遺伝子クラスターがフサリセチン生合成に関与していることを実証した。本菌株の形質転換ならびに遺伝子改変株作製が比較的容易であったため、計画に挙げていたゲノムライブラリー構築(とA. oryzae等の汎用糸状菌宿主へのクラスター導入)は行わないこととした。 3. フサリセチン生合成遺伝子(fsa)クラスターに含まれるすべての遺伝子を対象とした遺伝子破壊実験を行った。形質転換にはアグロバクテリウム法を用い、標的とするfsa遺伝子全長を薬剤耐性遺伝子と置換した遺伝子破壊株を作製した。得られた破壊株の代謝物生産プロファイリングにより、各遺伝子の生合成における役割を特定した。予想とは異なり、遺伝子クラスターの中にはエキセチンからフサリセチンへの変換を担う酵素遺伝子が含まれていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドラフトゲノム解読により候補となる生合成遺伝子クラスターの絞り込みと、それに基づく遺伝学的解析によりフサリセチン生合成遺伝子クラスター同定に成功している。クラスターに含まれる遺伝子の破壊実験と得られた破壊株の解析もほぼ予定通り進められた。ピロリジラクトンについても候補遺伝子クラスターの絞り込みまで完了しており、計画修正により次年度における目的達成は可能だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子クラスターの中に含まれていなかったフサリセチン合成酵素遺伝子については、RNA sequencingや類縁糸状菌のゲノム解読を行うことで、効率的に同定を進める。また、研究計画ではA. oryzae等の汎用糸状菌宿主を用いることを予定していたが、形質転換が比較的容易であるフサリセチン生産菌をそのまま解析の宿主として利用し、生合成遺伝子クラスター解析、経路改変による構造多様化を行うこととする。
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