研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108727
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 公益財団法人かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
鈴木 秀幸 公益財団法人かずさDNA研究所, 産業基盤開発研究部, 主席研究員 (80276162)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オミックス統合解析 / サポニン生合成 / P450遺伝子 / 次世代シークエンサー / 安定同位体酸素 / メタボローム解析 / 相関ネットワーク解析 / ウリ科植物 |
研究概要 |
本研究では、ウリ科植物ニガウリ(Momordica charantia var. pavel)のサポニン生合成経路と生合成酵素「oxidosqualene環化酵素(OSC)、水酸化酵素、配糖化酵素など」の全貌を解明することを目指し、生合成関連酵素の研究の推進にオミックス(トランスクリプトーム及びメタボローム)解析を最大限活用する新たな手法を提案する。 (1)「相関係数ネットワーク描画機能を備えた金平糖Java-GUIソフトの開発とその応用」 相関係数の閾値で描画する遺伝子ネットワークの外側と内側の関係性(トポロジー)を考慮する独自の金平糖アルゴリズムを搭載した金平糖Java-GUIの開発を行った。 (2)「MS/MSデータ解析ツール(MSMS_search)の開発及び応用例」 金平糖Java-GUIソフトを改良し、質量分析機器から得られる代謝物のMS/MS情報を解析するMS/MSデータ解析ツール(MSMS_search)を開発した。 (3)「次世代シークエンサーを用いたニガウリ由来のRNA-Seq解析及び遺伝子機能解析」 本研究では、次世代シークエンサーを用いてニガウリ由来の10種類の器官(葉、茎、果実、根など)のRNA-Seq解析を行い、ニガウリ由来のサポニン生合成酵素の遺伝子クローニング及び機能解析を行った。最初に、ニガウリ由来のCBS(McCBS)の遺伝子クローニングを行い、酵母GIL77株(erg7、lanosterol合成酵素遺伝子欠損株)をホストとするcucurbitadienol生産酵母の作出に成功した。次に、RNA-Seq解析における各植物器官のRPKM値を利用した相関解析を行った結果、McCBS遺伝子と最も高い相関係数を示すMcCYP81-6が選抜された。そこで、McCYP81-6の機能解析の結果、cucurbitadienolの側鎖C-23位が水酸化されたトリテルペン(cucurbitadien-3β,23-diol)であることを確認した。また、23位の水酸基の絶対配置に関しては、新Mosher法によってS配置と決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相関係数ネットワーク描画機能を備えた金平糖Java-GUIソフトとMS/MSデータ解析ツール(MSMS_search)の開発が順調に進行し、両方共に、プロトタイプが完成した。 次世代シークエンサーを用いたニガウリ由来のRNA-Seq解析及び遺伝子機能解析に関しては、RNA-Seq解析における各植物器官の相対遺伝子発現量を表現するRPKM(Reads per kilo base per million)を算出し、全遺伝子間の相関係数(コサイン・ピアソン)を計算した。McCBS遺伝子と遺伝子共発現の関係にあると推測するMcCYP遺伝子のリストを相関係数の高い順に並べ、最も有力視されている遺伝子クラスターの関係にあると推測されるCYP81(McCYP81)遺伝子から順番に前述したcucurbitadienol生産酵母を用いた機能解析を行った。その結果、全29種類のMcCYP遺伝子のクローニングに成功し、現在それらの機能解析を行っており、当初の予定より、多くの遺伝子のクローニング及び機能解析に手がけているので、順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子共発現解析で選抜され、酵素活性を示さなかったMcCYP遺伝子の機能解析に関して、遺伝子情報だけでは、真の基質や生成物を推測するには限界がある。そこで、本研究では、「基質や反応産物の情報に依存しない」新たな遺伝子機能解析方法を確立・提唱することを目的としている。これら機能未同定のMcCYP遺伝子はcucurbitadienol骨格に直接酸化酵素活性が認められないが、更に酸化反応が進行したcucurbitadienol或いは他のサポニン生合成経路に関与している遺伝子である可能性もあることから、植物抽出エキスと18O2(安定同位体酸素)も用いた酵素活性測定に着手した。我々は既に、18O2(安定同位体酸素)存在下で、組み換え酵素タンパク質を用いた酵素反応を行い、質量数18の酸素原子が付加した化合物を高分解能質量分析機器にて、抽出・分析する条件手法を開発している6)。また、JST-NSFの日米メタボロミクス研究において、LC-MS分析で得られた網羅的なMS情報から、安定同位体元素の識別を可能にしたShiftedIonsFinderを開発している。これらの技術を応用して、以下にMcCBS遺伝子の機能解析を進行している。5種のMcCYP遺伝子を選び、昆虫細胞-バキュロウイルス発現系を利用した膜タンパク質の発現を行う。次に、酵素活性に用いる基質にはニガウリ由来のサポニン粗抽出物及び加水分解したアグリコン(非糖部)を用いて、酵素活性スクリーニングを行う予定である。
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