ロドコッカス属細菌の最適化宿主株の構築のため、前年度までに取得した外来遺伝子を安定的に保持できる候補株について、それ以外の株と共にゲノム比較を行った。各株共通して保持しているものをロドコッカスの基本構成遺伝子構造とし、それ以外の部分は株に個性を与える要因となる遺伝子であると考えられる。しかし最適化宿主の候補株が、ある遺伝子を有していることが有利なのか、あるいは有していないことが有利であるかについては各遺伝子の詳細を調べる必要がある。このため、ロドコッカスの基本構造のみに単純化した(大規模にDNA領域を削除した)ゲノムの宿主株を作製、また個別の特に興味深い遺伝子については遺伝子破壊株、遺伝子導入株の作製を進めた。ゲノムの大規模領域削除株についてはcre/loxPのシステムをロドコッカスで初めて実行し、2つのプラスミドにloxLE配列とカウンターセレクション遺伝子、またはloxRE配列とcre recombinase遺伝子を分けて搭載し、それぞれのプラスミドには更に削除する領域の末端と相同な配列を片方ずつ導入した。この2つのプラスミドの二重シングルクロスオーバー変異株を作製し、その後にcre recombinaseを発現することで、2ステップの非常に簡便な方法によるゲノム削除の手法を開発することに成功した。またロドコッカスには多数の線状、環状プラスミドが存在するが、これらも不必要なものであるため、脱落手法についてsacB遺伝子を用いた新たな手法を構築した。プラスミドを3種保持する株については3回脱落の作業が必要となるが、こちらも高効率で達成する手法を開発する事に成功した。
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