メタンをメタノールに変換する生体内酵素としては、鉄を含む可溶性sMMOと銅を含む膜結合型pMMO があり、後者の構造は最近精密化された。後者のX 線の結果及び少なくとも本反応では3モルの銅が高活性には必要であることが報告されているが、反応活性種は特定されていない。本研究では、メタン資化細菌の酸化能力を十分に引き出して、未利用炭素資源であるメタンを有効に利用できる系の構築を目指して、以下の項目を重点的に行った。理論的・分光学的共同研究はスタンフォード大学Solomon 教授ととも、銅の酸化触媒系の比較などは、ジョーンズホプキンス大学Karlin 教授と、鉄の酸化触媒系の構築は、ミネソタ大学Que 教授と共同で行った。 ①単核の銅サイトの反応性の検討し、統一的な理論を完成させる。サイドオン型スーパーオキサイド銅(II)錯体の反応性を検討した。その結果、エンドオン型に比べて、著しく反応性の低下が見られた。酵素中でも、酸化反応には、ラジカルが酸素原子上にある、三重項スーパーオキサイド種を用いている可能性を本実験から明らかにした。②2核の銅サイト、特に高原子価オキソ種を生成させる系に関して検討を行った。配位子にフェニル環を導入すると、フェニル基のオルト位が水酸化され配位した2核錯体が得られた。さらに、アセトンを溶媒にすると、アセトンが酸化され配位した、乳酸錯体が得られた。詳細な解析を行ったが、本反応機構に関しては、更なる検討が必要である。水酸化されたオルト位をメチル基に変えた、メシチル基をした配位子を用いると、メシチル基が水酸化され配位した3核錯体が得られた。メチル基が水酸化されたのは、本系が初めての例である。今後反応機構の検討を行う。③2核の鉄サイトの詳細な電子構造を明らかにし、その反応活性種の系統的酸化反応を行った。 このように多くの知見を本研究により得ることができた。
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