1.プルンバシクロペンタジエニリデンによる小分子活性化の検討 THFにより安定化されたプルンバシクロペンタジエニリデンを用いた小分子活性化を検討した。二酸化炭素との反応は複雑で、生成物の同定には至らなかった。一方、一酸化炭素との反応では鉛が脱離し、シクロペンタジエノンが生成した。同様の反応は二硫化炭素の場合でも起こり、珍しいシクロペンタジエンチオンが生成した。この場合には鉛に加えて硫黄一つ分も脱離しており、奇妙な反応といえる。また、フェニルアセチレンとの反応では、鉛は脱離しなかったものの、プルンボール環の鉛-炭素結合が開裂してビニル末端がプロトン化され、鉛上にはフェニルアセチリドが導入されたプルンビレンが生成することがわかった。この反応機構は不明であるが、アセチレンの酸性度の高いプロトンが反応に関与していると考え、シクロペンタジエン(CpH)との反応も検討したところ、同様な反応が進行し、鉛上にはCpが導入された。14族元素二価化学種によるこのような形式のアセチレンの活性化は例がなく、極めて興味深い。 THFが配位したプルンバシクロペンタジエニリデンをリチウムで還元すると、二電子還元が進行してジリチオプルンボールが生じることから、ジリチオプルンボールを酸化したところ、二電子酸化反応がきれいに進行し、プルンバシクロペンタジエニリデンが生成した。このような二電子過程は14族元素の化学では知られておらず、極めて意義ふかい。 2.σ芳香族性の探究 π芳香族に対してほとんど研究されていないσ芳香族性に関する理論計算を行い、σ芳香族性を有する化合物を予測した。
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