公募研究
本研究では様々なリンを含む新規な骨格構造を作ることを目的として、実験による研究を行った。初めに、求核性を示すアニオン性4配位リン化合物と白リンの反応を試みたが、反応は進行しなかった。ルイス酸としてホウ素試薬を存在させて反応を試みたところ、アニオン性リン化合物がホウ素試薬と直接反応し、5配位リン原子と4配位ホウ素原子の間に結合を有する化合物が得られた。このような結合を持つ超原子価リン化合物はこれまでに報告されておらず、新規な結合である。アニオン性化合物の構造は各種多核NMRスペクトル、マススペクトル、X線結晶構造解析により決定した。結晶構造において、三方両錐構造をとるリン原子と四面体構造をとるホウ素原子が直接結合していることが確認され、その結合長はリン-ホウ素結合を有する一般的なホスフィンボランと同程度であった。リンとホウ素の配位状態を反映して、リン-ホウ素結合の近傍は立体的に混雑しており、リン-ホウ素結合は置換基によって完全に覆われていることがわかった。DFT計算の結果、ホウ素原子上の置換基の種類によってリン-ホウ素間結合の分極は大きく変化することが明らかとなり、NMRスペクトルからも支持された。電気化学測定の結果、非可逆な還元波を示し、酸化波は観測されなかった。その結果を反映して、得られたアニオン性リン-ホウ素結合化合物は空気中、室温で取り扱えるほどの十分な安定性を有していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的はリンを含む新規な骨格構造を創り、その構造や基本的な性質を調べることであるので、その目的に照らし合わせれば、おおむね順調に進展している。
リン原子およびホウ素原子の置換基の種類を変更して、より反応活性な誘導体を合成し、反応性を検討する。新規化合物の構造や反応性について共同研究を行って、研究を進展させる。リン原子とホウ素原子の組み合わせをフラストレーテッド・ルイスペアとして活用し、小分子の活性化に展開した研究を進める。
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Synthesis of a Phosphine Imide Bearing a Hydrosilane Moiety, and Its Water-Driven Reduction to a Phosphine
巻: 49 ページ: 10373-10375
10.1039/c3cc43955k