研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
25109513
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉尾 正史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60345098)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電場応答 / カラムナー液晶 / 分子集合ファイバー / 強誘電 / 自己組織化 |
研究概要 |
本研究の目的は、電子・光機能性を有する電場感応性分子集合体を創製することである。特に、スルホニル基やホスフィンオキシド基の永久双極子と電子受容性を活用した新しいπ共役液晶や分子集合ファイバーを構築することを目指した。 電場感応性カラムナー液晶の開発:π共役構造のビス(フェニルエチニルフェニル)スルホンの両端にトリアルコキシベンジルエーテル型のデンドロン部位を導入した分子を設計・合成した。この分子は、スルホニル基の永久双極子‐永久双極子相互作用およびπ‐π相互作用により一次元スタッキングし、サーモトロピックヘキサゴナルカラムナー液晶相を発現した。2枚のITO導電ガラス電極間にカラムナー液晶を封入し、6Hzの三角波電圧を印加したところ、電極基板上でカラムナー液晶が垂直配向することを見出した。さらに、電流電圧測定を行ったところ、分極反転に由来する電流が流れることが分かり、開発したカラムナー液晶が強誘電性を示すことが明らかとなった。 電場感応性分子集合ファイバーの構築:ビスフェノールスルホンと長鎖アルキルイソシアネートを反応することにより、ビスカルバメート誘導体を合成した。オクタデシル鎖やドデシル鎖を導入した分子は、トルエンやドデシルベンゼンなどの有機溶媒中で分子間水素結合およびスルホニル基の永久双極子‐永久双極子相互作用により一次元ファイバーを形成し、溶媒をゲル化することが分かった。これらのゲルを加熱してゾルとし、櫛形金電極間に封入した後、直流電場を印加しながら冷却した。電極間を橋渡しする配向したファイバーが形成することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にしたがって、電場感応性分子集合体の開発に成功した。スルホニル基を分子コアに導入した屈曲性分子を永久双極子‐永久双極子相互作用およびπ‐π相互作用を活用して一次元に自己組織化することにより、強誘電性カラムナー液晶および電場配向性分子集合ファイバーを世界で初めて構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
強誘電性カラムナー液晶および電場配向性分子集合ファイバーに関する研究成果を論文として報告する予定である。スルホニル基を有するπ共役分子が電場配向性カラムナー液晶性を発現することが明らかとなったので、アルキル鎖の代りにオリゴエーテル鎖などのイオン伝導性部位を導入した分子設計も行い、電場配向性イオン伝導体の開発も検討する。これにより、高効率な電池用電解質の開発が期待できる。
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