これまでに三重架橋ボリレン配位子を有するアルキン錯体と水との反応により三重架橋オキソボリル錯体が得られることを明らかにし、オキソボリル配位子の高いσ供与性によってアルキン配位子のモビリティーが低下することを報告してきた。オキソボリル配位子の特異な性質を活かすためにも、アルキン配位子をもたない反応活性なオキソボリル錯体を合成する必要があった。そこで昨年度は三重架橋ボリレン錯体と水との反応からヒドリド―オキソボリル錯体の合成に取り組んだ。複数の水分子との反応によりホウ酸の脱離によるペンタヒドリド錯体の副生も観察されたが、触媒としてアミンを添加することで水の求核性が向上し、速やかにオキソボリル錯体が得られることが明らかとなった。用いるアミンのかさ高さも選択性に影響を及ぼすことから、アミンがボリレンに付加することで水との反応が加速される機構が想定される。得られたヒドリドーオキソボリル錯体は4つのヒドリド配位子を有するが、室温ではこれらのヒドリド配位子がサイト交換を示すことも明らかにし、容易に配位不飽和種を形成しうることが示唆された。また、ボリレン錯体とピリジンとの反応では架橋ピリジル―三重架橋ボリル錯体が得られることも明らかにした。本反応ではピリジンの配位に伴い三重架橋ボリレン配位子上にヒドリドが移動し、アゴスティックなB-H結合を有する三重架橋ボリル配位子へと変換されることをX線構造解析を用いて明らかにした。
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