研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
25109517
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
竹内 大介 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (90311662)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不斉重合 / 光学活性ポリマー / 動的キラル錯体 / 不斉誘起 / シクロオレフィンポリマー / 一酸化炭素 / 共重合 / 異性化重合 |
研究概要 |
高分子合成では外部刺激によって遷移金属錯体触媒の構造が変化すれば、一つの単量体からステレオブロック共重合を達成できる。本研究ではキラルな基質によって不斉誘起を起こすC2対称構造をもつNi,Pdオレフィン重合触媒を用い、光学活性ポリマーや、光学活性なステレオブロック共重合体、繰り返し単位の構造の異なるブロックからなるレジオブロック共重合体の合成などを目指して検討を行っている。 昨年度は、種々のジイミンPd錯体やNi錯体を合成し、それを用いて4-アルキルシクロペンテンの重合を行い、錯体の構造と生成高分子の立体規則性の相関を明らかにした。錯体に光学活性アクリレートを作用させて不斉を誘起させた後に重合を行うことで、不斉重合が進行し、光学活性ポリマーが得られた。同様に3-アルキルシクロペンテンの重合を行い、二種類の繰り返し構造を含むポリマーが得られることを見いだした。単量体の光学純度と、二種類の繰り返し構造の割合との間に、良好な比例関係が観測されることを見いだした。ホモキラルな3-アルキルシクロペンテンを反応させた後に、逆のエナンチオマーを反応させたところ、ブロックの長さは短いもののステレオブロック共重合体が得られた。 C2対称Pd錯体がラセミ体の2-メチルメチレンシクロヘキサンと一酸化炭素との共重合が進行することを見いだした。この場合にも二種類の繰り返し構造が含まれることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではキラルな基質や温度などの外部刺激によって不斉誘起を起こす、C2対称構造をもつNi,Pdオレフィン重合触媒を用い、光学活性なステレオブロック共重合体、繰り返し単位の構造の異なるブロックからなるレジオブロック共重合体の合成などを目指して検討を行っている。 当初の計画では、昨年度は(1)錯体の構造と生成高分子の立体規則性の相関を明らかにすること、(2)錯体に光学活性化合物を作用させて不斉を誘起し、不斉重合を達成すること、(3)複数の単量体の共重合について検討し、錯体構造と共重合性の相関を明らかにすることの三点を目指して検討する予定であった。そのうち、(1)と(2)についてはおおむね達成できたが、(3)については検討するまでには至らなかった。一方で、当初は本年度行う予定であった、ステレオブロック共重合体の合成については一部達成することができた。 以上のことから、昨年度は研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに見いだしたC2対称Ni,Pd錯体による不斉重合の途中で、反応温度を変化させたり、光学活性化合物を添加するなどの外部刺激を加えることで、錯体の構造を変化させ、ステレオブロック共重合体の合成について検討する。 昨年度に見いだした2-メチルメチレンシクロヘキサンと一酸化炭素との共重合について、モノマーの光学純度と生成ポリマーの構造との相関や、錯体の構造と生成ポリマーの構造との相関について系統的に検討を行う。リビング重合を達成し、二種類の単量体を順次反応させ、ステレオマルチブロック共重合体を合成する。 外部刺激による不斉誘起のメカニズムについて知見を得るため、モノマーとして用いている基質のヒドロシリル化について検討を行う。また、計算化学を用いたメカニズムの解明についての共同研究を進める。
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