研究概要 |
代表者らはFe-Ni-Ni-Fe四核錯体とかさ高いチオラートNaSDmp (Dmp = 2,6-(mesityl)2C6H3)の反応から、[NiFe]ヒドロゲナーゼモデル(CO)3Fe(StBu)3Ni(SDmp)が生成することを見いだしている。 (1) 種々のかさ高いチオラート配位子を有する活性部位モデル合成 Dmpチオラートの代わりに種々のかさ高いチオラートを有するFe-Ni二核モデル錯体の合成を検討した。例えば松尾(A01班)らの協力を得てEind基を持つチオラートNaSEindをFe-Ni-Ni-Fe四核錯体と反応させ、モデル錯体(CO)3Fe(StBu)3Ni(SEind)を合成した。また、時任(A03班)らが開発した独自の置換基Tbtを利用し、同様にモデル錯体の合成を検討したが、生成物は不安定であり-40Cでも分解した。SEind, STbt以外にもSC(SiMe3)3配位子、SDxp配位子(Dxp = 2,6-(xylyl)C6H3)も用い、Fe-Ni二核錯体を合成した。 (2) 活性部位モデルとH2の反応 上記(1)で得られた一連のモデルをヘキサンに溶解させ、錯体が熱分解しない-40CでH2と反応させた。DmpチオラートおよびEindチオラートを持つモデル錯体は徐々にH2と反応し、チオールを遊離するとともに褐色の沈殿を与えた。生じたHSDmpのNMR収率は77%であった。褐色の沈殿のIRスペクトルでは、Fe-Ni-Ni-Fe四核錯体に似た波数とパターンでCO伸縮が観測され、一方で褐色の沈殿の蛍光X線分析ではFe-Ni-Ni-Fe四核錯体に存在するはずの臭素が観測されなかったことから、Fe-Ni-Ni-Fe四核錯体と構造が類似したヒドリド錯体が生成したと予想している。
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