研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
25109526
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平尾 泰一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50506392)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子認識 / 構造・機能材料 / 物性実験 / エネルギー全般 / 複合材料・物性 |
研究概要 |
サンドイッチ構造はプロトンスポンジやパイダイマーラジカルに見られるようにプロトンの捕獲や不対電子の安定化の際によく用いられる構造である。本研究課題では新たなサンドイッチ構造を構築し、プロトンと電子つまり水素原子を安定的に包接することを目指している。初めにジヒドロピリジン/ピリジニウムラジカルの酸化還元対間の自己交換によるプロトン・電子移動反応に着目した。量子化学計算から遷移状態について構造と電子状態について予測したところ、二つのピリジニウムラジカルがパイスタックし、水素原子が4位炭素によって挟まれたものであった。この時のピリジニウムラジカル-水素原子-ピリジニウムラジカルの結合様式は3中心3電子結合とみることもできる。以上の結果を参考に分子内において2つのピリジニウムラジカル骨格をベンゼン環の1位と2位に置換することで両者が向かい合うように配置したビラジカル分子を設計し、合成を試みた。最終化合物をその2電子酸化体であるジカチオン体として単離することに成功した。単結晶X線構造解析から分子の構造について調べたところ、ピリジン環同士がV字型に向かい合い、4位炭素間の距離は3.09 Aであった。また電気化学的測定から分子内の2つのピリジン骨格間には相互作用がないことがわかった。次に水素原子のトラップを目指して、ジカチオン体を電気化学的に還元することでビラジカル体を得た。酸性条件下においてビラジカル体を電気化学的にさらに1電子還元したところ、滴下した酸の酸性度の違いによってプロトンが付加する位置が異なる様々な還元状態が発現した。そして、それらの中に水素原子がサンドイッチされたような状態が含まれることがわかった。現在、詳細について分光学的に確認しているところである。また、サンドイッチ状態のさらなる安定化を狙い、ピリジニウムラジカルをアクリジニウムラジカルとした誘導体の合成を現在試みているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度内に計画していた水素原子のサンドイッチを目的とした新規化合物の設計および合成を完了することができた。また、水素原子のトラップ挙動に関して予備的ではあるが研究をスタートすることができた。このように申請書に記載した計画の通り研究は行えており、研究の目的へ向けて着実に前進している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は現在得られている化合物での水素原子(プロトン+電子)のトラップ挙動について詳細に調べる予定である。例えば吸光スペクトル測定によってユニット間における不対電子の移動または非局在化の状態について調べる。ESR測定からは不対電子の状態のみならず、プロトン核との相互作用からさらに詳細な情報を得ることができるはずである。また単離・結晶化についても挑戦する予定である。結晶化によってX線構造解析や他の分光法が利用できるようになる。さらにアクリジニウムラジカルを含む誘導体についても引き続き合成を行い、上と同様の方法でトラップ挙動について調べることを計画している。
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