公募研究
近年、分子磁性体研究の新しい展開として、光学活性な安定有機ラジカルを基盤としたキラル磁性体に注目が集まっており、これまでにいくつかの安定なキラル中性ラジカルが報告されている。それらは、いずれも局在型の電子スピン構造を有するニトロキシド型中性ラジカルを基盤としており、不斉の起源となる不斉炭素中心は電子スピンが存在するN-O基とは離れた部位に存在している。本研究者は、フェナレニル骨格を基盤とした平面型の縮合多環炭化水素ラジカル(「開殻グラフェンフラグメント」)についての研究を長年にわたり行っており、空気中でも安定な有機ラジカルの電子スピン非局在性に基づく様々な新しい物性・機能を実現してきた。これらの研究から得られた知見を基に、近年、ヘリセン型構造を有するπ拡張型ジアザフェナレニル中性ラジカルを設計・合成し、P およびM体の光学活性体としてそれぞれ単離に成功した。本研究では、平面π電子系の安定中性ラジカルにヘリセン型キラリティを導入した新たな安定有機中性ラジカルを合成し、電子スピン特性と光学特性の両方を併せ持つ「新物性創出のための感応性化学種」の開発を進めている。6-オキソフェナレノキシルを [4]ヘリセン骨格に組み込んだ有機中性ラジカルの合成にH25年度に初めて成功した。H26年度においては、この中性ラジカルの合成スケールを向上させ、各種の物性測定に必要な量の合成を検討してきた。その結果、中性ラジカル前駆体であるラセミ体のアニオン種についての単結晶X線構造解析に成功し、分子構造に関する詳細な情報を得ることができた。また、電子スペクトルやサイクリックボルタンメトリー、各種の溶液ESR測定等を実施することで、電子スピン構造や酸化還元能に関する情報を収集することができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://aitech.ac.jp/~morita/index.html