公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究課題では、金属酵素および生体を規範とした分子触媒による小分子活性化の反応機構の解明し、効率的な分子触媒の創製に必要な知見を得ることを主たる目的としている。したがって、小分子活性化反応過程に含まれる反応中間体の分子構造、電子状態、および反応性の相関について洞察を得るために、反応中間体を低温条件で化学的にまたは電気化学的に調製し、詳細な分光学により解析することを目的としている。したがって、従来の低温溶液測定系に加えて、低温にて電気化学的測定、共鳴ラマン分光、および吸収分光を同時に可能にする低温電解分光セルの開発を行うことを計画した。これらの目標のために、今年度は革新的なシンクロトロン放射光を用いた振動分光法である核共鳴非弾性散乱分光法により、二核鉄触媒活性中心を持ち、酸素活性化および強固なC-H結合活性化を実現する生体触媒モデル錯体において生成する高原子価鉄オキシ種の分子構造と電子状態解析を、スタンフォード大学、ミネソタ大学、京都大学、SPring8のグループらと国際共同研究により行った。本研究成果は、米国科学アカデミー紀要に掲載され、プレスリリースをするに到った。また、九州大学との共同研究により、高原子価マンガンペルオキシ錯体の共鳴ラマン分光解析を行った。また、エネルギー変換化学の観点から、電気化学的触媒反応のメカニズムの解明が重要であるが、低温にて電気化学的測定、共鳴ラマン分光、および吸収分光を同時に可能にする低温電解分光セルの開発を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初年度の目的は、(1)金属酵素による小分子活性化の分子機構の解明を目指すべく、機能性錯体において生成した反応中間体の分光学的研究、および(2)低温にて電気化学的測定、共鳴ラマン分光、および吸収分光を同時に可能にする低温電解分光セルの開発、である。(1)については、国内外の研究グループとの共同研究により、優れた成果を得る事ができた。一例としては、スタンフォード大学、ミネソタ大学、京都大学、SPring8のグループらと国際共同研究により得られた成果は、米国科学アカデミー紀要に掲載され、プレスリリースをするに到った。にまた、(2)についても、設計および製作を完了し、今後重点的に実験を行う予定である。以上の研究進行状況から、目標の80%は達成したと考える。
今後の研究として、今年度に開発した低温電気化学分光セルを用いて、エネルギー変換に関わる分子触媒の反応機構の解明を目指すべく、反応中間体の分子構造-電子状態-反応性の相関について洞察を得るべく、分光学的研究の展開を試みる。また、化学的調製によって得られる金属酵素および生体模倣分子触媒の反応において生成する反応中間体について、共鳴ラマン分光法、および核共鳴非弾性散乱分光法により分子構造解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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