公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
チオフェン環のβ位にCH3-, CH3O-, CH3S-基を導入したジチエニルピロールを合成し、ラジカルカチオン種の安定性及びπダイマー形成能に対する置換基の効果を検討した。吸収スペクトルの経時変化及び温度変化の結果から、CH3O-基を導入した誘導体が最も安定であり、高いπダイマー形成能をもつことがわかった。また一電子酸化に伴うこの交互三量体のキノイド構造への変化において、ピロールのN-CH3基とチオフェンのβ位の置換基間の立体反発から、通常の安定配座であるtrans体が不利となり、cis-cis体の方が安定化すると考えられるが、実際理論計算と実測のスペクトルとの比較から、このチオフェンのβ位に置換基を導入したラジカルカチオンおよびそのπダイマーが、シス体になるということを確認することに成功した。一方、チオフェンユニットのβ位にアルキルチオ基をもつベンゾジチオフェンの新規合成経路を開拓し、先のチオフェンのβ位にアルキルチオ基を導入したジチエニルピロールをこのベンゾジチオフェンユニットの両サイドに導入したオリゴマー分子を合成した。さらにそのジカチオン種が、中央のベンゼン環の芳香族性に由来し、高いジラジカル性が発現することを明らかにした。これらの結果から、シス型が安定配座であり、カチオン種でも高い安定性を示すジラジカル種に関する知見が得られ、今後らせん構造を有するオリゴマー分子の構築に向け、基礎的な知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、チオフェン環のβ位にメトキシ基を導入したジチエニルピロールのラジカルカチオン種が、室温溶液中で長時間安定に存在できることを明らかにし、さらにシス型のπダイマーを形成することを見出した。また、オリゴチオフェンにベンゾジチオフェンを挿入することにより、ジカチオン種のジラジカル性が高まるという結果も得ており、今後の進展の鍵となる知見を得ることができた。
今年度に得られた知見を基に、アルコキシ基をチオフェンのβ位に導入したジチエニルピロールおよびベンゾジチオフェンを基本骨格とし、これらを組み合わせることにより、酸化状態でらせん構造が誘起される高分子およびジカチオンジラジカルのπダイマーの積層による超分子構造体の構築を目指す。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
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