公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
開殻分子は一過性の化学種と考えられてきたが、分子設計により空気中でも容易に扱える化合物が多く知られるようになった。その結果、分子磁性、二次電池活物質としての有用性が実験的に確認され、新たな分子エレクトロニクス材料として注目を浴びている。本研究者はこれまでに高スピン分子の酸化還元特性に着目し、従来単離不可能であった酸化状態を有する化学種の安定化法を検討し、それらの物性解明を行ってきた。本研究では、以下に示す酸化還元感応性を有する機能性pi電子系分子システムの開拓と機能解明を目指している。課題1)新規ニトロニルニトロキシド直接連結型金属錯体の創製:本研究者は最近ピンサー白金錯体に安定ラジカルであるニトロニルニトロキシドが直接連結した錯体が非常に簡便に合成できることを見出した。この方法を利用して、種々の配位子、金属種を検討した結果、金、銀、銅錯体の合成に成功した。これらの錯体において、ニトロニルニトロキシド部の酸化電位が無置換ニトロニルニトロキシドよりも著しく負側にシフトすることを見出した。また、それら酸化電位は金属元素に依存することも見出した。課題2)酸化還元感応性高スピン分子の設計と合成:安定ラジカル置換電子ドナー分子は電子ドナー部の一電子酸化により高スピン分子が発生する。本年度、ニトロニルニトロキシドを二つ導入したジヒドロフェナジンの合成に成功し、その一電子酸化体が基底四重項種であることを明らかにした。また、多数の電子ドナーが連結した分子も多段階の酸化特性を示し、かつ高スピン分子になる可能性がある。電子ドナーであるフェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジンを複数ホウ素に置換した分子を設計し、その酸化還元特性を調査した。まず、一電子酸化体を単離、結晶化に成功し、その性質と構造を精査した。
2: おおむね順調に進展している
課題1および2ともに目的とした分子システムの合成に成功している。それらの酸化還元特性に関しても興味深いデータが得られつつある。
昨年度までに得られた結果をもとに、当初の計画通り酸化還元特性を有する開殻分子システムの創製を展開する。
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