公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本課題は、高反応(不安定)性のため、合成が避けられていたカルコゲン化合物群の創製を行うものであり、酸素がもたない種々の酸化状態の変化に伴う多様性を解明することを目的とする。とりわけ合成が困難とされている電子供与性置換基を有する高周期16族元素を含む「感応性カルコゲノニウム塩」と、4および6価の高酸化状態をもつ「感応性超原子価カルコゲン化合物」の創製と反応を行うことを中心課題として研究を行った。「感応性カルコゲノニウム塩」:炭素を中心とするカチオン性トリアリールメタン系色素は、古くから知られる染料や感応性呈色分子群である。本申請年度は中心元素を高周期16族元素(Te, Se)とした感応性化合物群の合成を行なった。16族オニウムは発色しないと考えられていたため研究対象とならずにいたが、電子供与性基としてジアルキルアミノフェニル基をテルル上に導入し、オニウム塩として単離し、その後配位能力の弱い対アニオンへと交換することで、緑・青色に呈色する感応性オニウム塩となることが明らかとなった。対応するセレノニム塩についても検討をすすめ、合成単離に成功した。予想に反して、テルルとセレンの中心元素の異なる同族体オニウム種で、セレノニウム塩はほとんど呈色しないことが明らかとなった。「感応性超原子価カルコゲン化合物」:中性4価テトラアリールテルルは固体状態で三方両錐構造を有することが古くから知られているが、電子供与性置換基であるメトキシ基を導入すると、従来は遷移状態であると考えられていた四角錐構造を固体中で有することが明らかになった。この現象の発現理由を探るため、メチル基を導入したテトラメシチルテルルの合成単離を行った。結晶構造解析の結果、固体中で四角錐構造を有することが明らかとなった。これは、従来の概念とは異なり、必ずしも三方両錐構造を示さない場合が有り得ることを実験的に示した最初の例となった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に沿って、合成が困難であると予想された電子供与性置換基を導入した新規化合物の合成単離に成功している。特に、中性四価の酸化状態を有する有機カルコゲン化合物は高反応性であり、その固体中での構造が四角錐構造を有するかどうかの発現理由を探るためには、合成単離と構造解析が必須であり、数々の試行錯誤の結果、四角錐構造を有する化合物の合成に成功している。今後、更なる検討を継続することで研究計画と目的を達成出来るものと考えている。
昨年度までに得られた知見に基づいて、電子供与性基を有する中性六価化合物群の合成に着手する。また、中性四価化合物は、溶液中ではその構造を四角錐から三方両錐へと変化させていることが予想され、その動的挙動の感応性要因についても検討を行う。
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Canadian Journal of Chemistry
巻: 92 ページ: 印刷中
10.1139/cjc-2013-0496
Inorganic Chemistry
巻: 52 ページ: 11700-11702
10.1021/ic402301u
Chemistry - A European Journal
巻: 19 ページ: 16946-16953
10.1002/chem.201303672