公募研究
本研究は、① 実験室における高周期元素化合物結晶の高精度・高確度X線回折法の開発、② 分子軌道分布の直接観察法開発を目的として行っている。今年度は、ケイ素間、炭素-硫黄間の多重結合のπ軌道の観測、結合の性質を中心に研究を行った。また、高精度なX線結晶構造解析を担当し、当該新学術領域研究班員と共同研究を行った。以下の平成26年度の成果について述べる。1.Si間多重結合のπ軌道観測Trans-bent 構造をもつ、ジシリンおよびジシランは、アセチレンやエチレンに見られる対称的なπ軌道とは異なり、trans方向に歪んだπ結合を有することが計算化学により予測されている。この軌道を実験的に観測することを目的に、ジシリン、ジシランについて電子密度分布解析を行った。ジシリンは、trans-bentした面内のπ軌道が歪み、もう一方のπは対称的である。電子密度分布解析の結果、trans-bent方向の軌道の歪みを観測することができた。しかし、σ軌道とπ軌道の分離ができないために、明瞭な結果は得られなかった。Si間二重結合を有するジシレンについても、歪んだπ結合を観測できた。結合距離が三重結合に比べ長いこと、結合を形成する電子の総数が少ないことから、電子密度がジシリンに比べ疎になり、σ結合の電子密度分布を分離しなくても、明瞭なπ結合が観測された。2. チオアロイルカチオンにおけるC-S結合チオアリロイルカチオンは、アロイルカチオンとは異なりC-S間で三重結合の寄与はないとされている。ところが、メシチレン環上にC+=S基をもつ化合物の電子密度分布解析を行った結果、C-S結合において、二重結合を形成するメシチレン環面内のπ結合だけでなく、これに垂直なπ結合も観測された。結合楕円率から、メシチレン環に垂直なπ結合の寄与はベンゼン環中のC-C結合におけるπ結合程度であると見積もることができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件)
Chem. Sci.
巻: 6 ページ: 2354-2359
10.1039/c4sc03849e
Chem. Lett.
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10.1246/cl.140507