研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
25109703
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 祥一 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (20514863)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | メタマテリアル / ナノインプリントリソグラフィ / 界面 |
研究概要 |
本研究課題では、可視光領域で応答するメタマテリアルとして期待される、数十nmの金細線からなる二分割スプリットリング(SRR)構造を、光学特性評価・機能発現に資する面積にわたって作製する要素技術の確立を目指した。 本年度は、線幅約50nmの二分割SRR構造を有するモールドからナノインプリントリソグラフィによって構造転写する要素として、樹脂レプリカモールドの作製、レジスト樹脂材料の設計、サブ100nm膜厚の塗膜形成に要する界面制御、金微細加工を行うためのエッチングプロセスについて検討した。レプリカモールドとしては、ラジカル重合型(メタ)アクリレートモノマーを主成分とした種々の光硬化樹脂を探索し、適切な樹脂の選定に至った。レジスト樹脂に関する検討としては、フェニル基を含有する化学構造を有する樹脂がエッチング耐性に優れることを見出した。また、基板表面を反応性単分子膜で修飾することで、レジスト樹脂の極薄膜を安定に塗膜できることを示した。これらの検討に基づき、芳香族炭化水素系の熱可塑性樹脂であるポリスチレン薄膜をレジストとして用い、熱ナノインプリントにより成形し、イオンミリングによってエッチングを行うことで、5mm角全面にわたって線幅約50nmからなるSRR構造体配列を作製することに成功した。また、芳香環含有ジメタクリレートモノマーを主成分としたレジスト材料を用いた光ナノインプリントリソグラフィによっても、同様の構造が形成できることを示した。 作製した金SRR配列体について偏光透過スペクトル測定により光学特性の評価を行った。光の磁場成分がリングを貫くように測定光を入射させた場合に、磁場との相互作用によって電子振動が誘起されたことに由来する共鳴吸収を可視光領域で観測した。有効透磁率の変化につながる現象を可視光領域で実験的に実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可視光領域でメタマテリアルとして機能すると予測される、線幅約50nmの二分割金スプリットリング共振器配列体の5mm角全面にわたる構造形成を達成した。これは、ナノインプリントリソグラフィの要素技術を詳細に検討した結果である。5mm角の面積は、実験的に光学特性を明らかにするための分光測定用の試料として十分な大きさである。光学特性の検討に資する大面積パターン形成という目標を達成したと言うことができる。 さらに、作製した試料について実際に光学測定を行い、入射光の磁場成分に応答した光学特性を可視光波長で観測することに成功した。これは、可視光応答メタマテリアルを実現する基礎として重要な結果であり、本年度の計画目標を概ね達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は熱ナノインプリントリソグラフィにより、可視光応答メタマテリアルへつながる重要な基礎を得た。今後は、大面積化が容易であると期待できる光ナノインプリントリソグラフィによる金スプリットリング共振器構造の作製へ向け、さらに要素技術検討を進展させる。これにより、構造の積層化、光学素子展開を見据えた機能化に向けた研究を推進する。 光学特性の詳細な検討については、領域内の研究室との提携を進め、シミュレーションと実験結果を密接に関連づけながら相補的に検討し、最も効果的にメタマテリアルとしての特性を示す構造設計・作製を行う。研究グループ間の綿密な議論による相乗効果に基づき、可視光応答メタマテリアル実現へ研究を推進する。
|