本研究課題は、線幅約50nmの金細線からなる二分割スプリットリング(SRR)構造を作製し、これを大面積化・集積化することによって、可視光領域で応答するメタマテリアルへの展開を目指した。本年度は、大面積化に対応するため、光ナノインプリントリソグラフィによるSRR構造作製を基本とし、モールド(鋳型)から金薄膜への正確な構造転写を実現する要素技術開発を行った。 昨年度に、ドライエッチングに対する耐性に優れるレジスト材料として選定した、芳香環を含有するジメタクリレートモノマーを主成分とする光硬化性組成物を主材料として用いた。金薄膜の加工プロセスとして、リバース型光ナノインプリントリソグラフィを検討した。Arイオンミリングによるエッチング速度の速いジアクリレートモノマーを主成分とする光硬化性組成物を金薄膜基板上に成膜し、光ナノインプリントによりSRR型凹パターンを形成し、上記の芳香環含有光硬化性組成物を塗布・硬化させた後に、Arイオンミリングを行うことで、レジストパターンの凹凸を反転させることができた。これをマスクとして引き続きArイオンミリングを行い、金SRRを形成させた。このプロセスによって、モールドの形状を忠実に反映した金SRR配列体を作製できることを見出し、大面積化が十分に可能であることを示した。また、金SRR配列体の積層化についての原理検証、および、光学特性に関わる理論的考察と実験的観測結果との相補的な検討に基づき、集積化・可視光応答メタマテリアル実現への基礎を築く科学的知見を得た。
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