研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
25109706
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 修一 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (30282685)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 物性理論 / スピンエレクトロニクス / トポロジー / 磁性 |
研究概要 |
金属表面に周期的に凹凸を取り入れた1次元プラズモニック結晶について、金属表面の凹凸が小さいとして摂動的に取り入れた場合に、プラズモンの周波数を求める問題をエルミートな固有値問題として初めて定式化した。ここでは凹凸のある表面を平坦な表面へと座標変換し、その座標変換を用いて摂動を導入するところが従来の研究と異なるところである。また二波近似を用いて、ブリルアンゾーン境界付近で波動関数の近似形を解析的に導き、それを知られている結果と比較し一致することを確認した。またこの固有値問題がエルミートとなるのはライトコーンの外側においてのみであり、ライトコーンの内側では固有値問題が非エルミートとなるが、これは真空中に電磁場が放射されるためと解釈される。次にこれらの結果を、電子系の場合の2波近似と比較した。類似が見られるが、電子系の場合はハミルトニアンに摂動項が加わるのに対し、プラズモンの場合は境界条件に摂動が加わる点に違いがあり、プラズモンの場合の解析的取り扱いを難しくしている。 また強磁性体中のマグノンのベリー曲率による波束のダイナミクスについても研究を行った。マグノン波束のダイナミクスに関して、強磁性体の厚さが空間的に変化しているような場合に、その段差のところでマグノンのベリー曲率により波束が横ずれを起こす効果について、計算を行った。同時に共同研究者によって行われている、強磁性体へマグノンを注入し、それを空間的に離れたアンテナで検出しその所要時間を測定する、という実験において、理論計算を行った。これは今後、マグノン波束のベリー曲率による横ずれを測定する実験のための基礎となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、プラズモニック結晶のエルミートな固有値問題の定式化が難しいと考えていて、そこに時間がかかる予定であった。その段階の困難がほぼ25年度に解決された。そのため予定以上に順調に進行しているといえる。今後は2次元プラズモニック結晶シミュレーションなど、計算の筋道がはっきりしている段階となり、計画は遅滞なく実行されてきている。1次元の場合はすでに論文として出版されており、2次元の場合も論文の執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカル相を実現するような2次元プラズモニック結晶を設計する。電磁場シミュレーションソフトを用いて、以下の順で計算を遂行する。第一に、三角格子や蜂の巣格子などの形状になるように、金属表面に凹凸を設けて、プラズモンの分散が解析計算と同様にディラックコーンになることを確かめる。第二に、さらにそこに時間反転対称性の破れを入れて、ギャップが開くことを確かめる。できればその波動関数からトポロジカルナンバーを計算する。第三に、その相のトポロジカルエッジ状態をリボン状の系についての計算で再現することを目指す。計算ができたら凹凸の高さや物質の探索など、パラメタ・物質の最適化に関する研究へと発展させる。 その一方でさらに解析的な計算を進める。電子系ではトポロジカル相がさまざま知られており、それらの類似物がフォトンやプラズモンの系において実現する可能性を探る。トポロジカル相の中には、空間の対称性を加味して初めて現れるものがあり、電子系で多く議論されているが、それらが電磁場の系で実現されるかどうか検討する。
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