研究実績の概要 |
メタマテリアルによれば、負の透磁率や負の屈折率など、従来の光学材料では得られない特異な光学機能の発現が可能となる。本研究では、有機半導体/無機半導体の二層積層構造における光誘起キャリアの電荷移動に基づく高効率なテラヘルツ透過の光変調原理を利用したアクティブ・テラヘルツ・メタマテリアルの創製を検討した。有機半導体としては銅フタロシアニン(CuPc)、無機半導体としては高抵抗シリコン(Si)を用いた素子を用いてこれまで検討を進めてきたが、印刷技術による微細構造形成に適した材料系として、塗布型の有機半導体の採用を検討した。低分子系として6,13-bis(triisopropylsilylethynyl) pentacene (TIPS-pentacene)および[6,6]-phenyl-C61-butyric acid methyl ester (PCBM)、高分子系としてpoly(5-(2-(ethylhexyloxy)-2-methoxycyanoterephthalyliden) (MEH-CN-PPV)、Poly(benzimidazobenzophenanthroline) (BBL)を検討した。いずれの素子も高抵抗Si基板上にスピンコート法により成膜した。TIPS-pentaceneのみはディップコート法により成膜した素子もあわせて作製した。光変調のための照射光源としては波長532nmのCWレーザーを用いたが、CuPc、PCBMは532nmでの吸収が低く有機薄膜側から照射したのに対し、TIPS-pentacene、MEH-CN-PPV、BBLに関しては背面(Si側)より照射した。MEH-CN-PPVの変調効率はCuPcのものに比べかなり劣り、TIPS-pentaceneやBBLはCuPcと同程度、PCBMはより高い変調度を示した。本研究で得られた知見は、塗布形成によるアクティブ・テラヘルツ・メタマテリアルの開発の可能性を示唆するものである。
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