26年度は次の研究実績があった。 (1)光アンテナと三準位分子が相互作用し、その結合系が量子干渉してエネルギー透過が起こる条件で禁制遷移を経由した二光子上方変換が極めて高効率に起こることを明らかにした。特に、次の二点の知見が重要であった。すなわち、このような上方変換が、簡単なレンズを用いれば太陽光程度の強度でも起こり得ることが明らかになった。また、具体的な金属構造を想定した離散双極子近似を用いた数値計算によって、実験で再現可能な現実的系でそのような現象が起こり得ることを明らかにした。 (2)上述の数値計算で想定した、金属アンテナー分子結合系が複数配置された場合の相関効果を調べた。その結果、波長程度に離れていても配置の向きに依存して強い相関が生じることが明らかになった。 (3)ウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)共鳴を有する磁性誘電体が配列した際の非相反的光伝播を調べてきたが、26年度は、磁性誘電体が多量に配列した系の光学応答が、その規則性によらず計算できる数値手法が完成した。その結果、誘電率非対角項が虚部である場合の光のエッジモードの存在と、実部である場合の非相反的光学応答の存在を、数値計算から明らかにすることが出来た。また、カーボンナノチューブなどのカイラル電流を用いて実際に誘電率非対角項の実部を実現できることが理論的に明らかになり、上記、非相反的光学応答が実現する実際の系を提案することが出来た。
|