研究領域 | 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究 |
研究課題/領域番号 |
25110505
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
張 勁 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20301822)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 松川浦 / 汽水域 / 分布変動実態 |
研究概要 |
福島第一原子力発電所事故により環境中に放出された人工放射性物質は,陸上に沈着した後,水物質循環に伴い移動し,最終的には海洋へ移行する。本研究では,塩分勾配や潮汐による変動があり,河口-沿岸域のミニチュア版と見なすことができる汽水湖の松川浦(福島県相馬市)をモデル域とし,現場観測及び室内実験を通して,河川-汽水域-海洋の系における放射性物質の輸送実態を明らかにし,同系を移動する過程での変質過程及び吸着脱着過程の解明を目的とする 福島県の相馬双葉漁業協同組合松川浦支部と連携し,相馬市に位置する松川浦及び流入河川において現地調査を9月より継続して行っている。特に台風(MAN-YI)通過前後において,流入する全河川の試料採取し,松川浦内部の調査を行う際にはセジメントトラップによる懸濁粒子の採取も行った。現在までに,1)松川浦内に比べ,河口域の放射性Cs濃度が高く,松川浦内表層堆積物中の放射性Csの分布は潮汐により再懸濁した細粒堆積物の移動が主な支配要因であること,2)湾口より松川浦内部から再懸濁した粒子が外海へ移動していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,福島県相馬双葉漁業協同組合松川浦支部と連携し,相馬市に位置する松川浦及び流入河川において現地調査を行った。特に台風(MAN-YI)通過前後に,松川浦に流入する全河川の試料を採取した。また,松川浦内部の調査を行う際にセジメントトラップを多数設置し,懸濁粒子の採取も行った。現在までに,松川浦内に比べ,河口域の放射性Cs濃度が高く,松川浦内表層堆積物中の放射性Csの分布は潮汐により再懸濁した細粒堆積物の移動が主な支配要因であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,実験室での室内実験に重点を置きつつフィールドでの観測調査を並行して行う。 実験室での室内実験では,河川堆積物及び汽水域堆積物を用いて,河川-汽水域-海洋の系における放射性核種の吸着・脱着メカニズムの解明を行う。現地におけるフィールド調査では,現場でのセンサー観測や,水試料・懸濁物・底質試料及び生物試料を採取する。採取した試料の分析を行うことにより,松川浦と流入河川における福島第一原子力発電所事故に起因する放射性物質分布の変動実態を定量的に明らかにする。室内実験結果及び観測結果を踏まえ,汽水域から放出される放射性物質量を見積もり,汽水域における放射能汚染の改善メカニズムを推測する。
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