公募研究
樹皮へのセシウム(Cs)水溶液塗布あるいは土壌へのCs水溶液投与により、Csを吸収させた三年生のスギを調製した。所定の時間経過時点でスギ試料を採取、急速凍結した。凍結試料を用いて誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)によるCsの定量分析および低温二次イオン質量分析/走査電子顕微鏡(cryo-TOF-SIMS/SEM)分析による樹木内Cs分布の可視化を行った。Cryo-TOF-SIMS/SEM分析の結果より、塗布部から採取したサンプルでは、Csは外樹皮に高濃度で存在したが、内樹皮との境界で大きく濃度が低下した。Csは木部領域においてほとんど検出されなかったが、最も内側の髄の部分では多く検出された。樹皮へ塗布されたCsが髄へ到達しているにも関わらず、その途中の木部でほとんど検出されなかったことについて、外樹皮から内樹皮への侵入速度よりも木部を通過する速度の方が大きいため、木部における瞬間的な存在量が少ないのではないかと考えられる。8時間あるいは48時間塗布試料について、塗布部より20 cm上部の測定結果では、どちらも髄にのみCsが検出され、髄を経由した軸方向輸送が示唆された。土壌から経根吸収させたサンプルでは、樹皮、木部、および髄でCsが観察された。樹皮塗布の場合と比べて、特定の細胞内に局在している様子が木部領域でより多く観察されたことから、輸送経路に差異のある可能性が示唆された。Csの吸着状態について調査するため、水溶性Csを用いて樹木中の各種成分に関する吸着定量実験、赤外分光測定、および放射光硬X線微細構造分析による化学状態分析を行った。結果より、水溶性Csの樹木構成成分への吸着動態は主に陽イオン交換によるものであり、木質バイオマスへの吸着・乾燥過程における大幅な存在形態変化は検出されなかった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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