知的障害及び自閉症原因遺伝子産物IL1RAPL1及びそのリガンドPTPδの相互作用からシナプス前部、後部が誘導される分子シグナルのネットワークを明らかにするとともに、シナプスオーガナイザーの機能欠損が引き起こす神経発達障害におけるシナプス病態と回路構築病態を明らかにすることを目的として研究を行った。IL1RAPL1の細胞内領域をベイトとしたアフィニティークロマトグラフィーにより、多数の結合因子を同定した。興奮性シナプス後部に局在するIL1RAPL1の細胞内領域にはRhoグアニンヌクレオチド変換因子であるMcf2Lが結合し、ROCK等を介してシナプス後部スパイン形成を担うことを明らかにした。また、IL1RAPL1-Mcf2L-ROCK経路はAMPA型グルタミン酸受容体の膜移行を調節して、興奮性シナプス成熟にも関与することを明らかにした。一方、IL1RAPL1欠損マウスの行動学的解析から、参照記憶、作業記憶の異常、行動の柔軟性の異常、社会性の異常等の神経発達障害に関連する行動表現型を見出してる。
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