公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
変性性神経疾患では、カルシウムシグナリング異常、および核の機能異常を示唆する知見が蓄積しているが、両者の分子連関は未解明の部分が多い。シナプスにおけるAMPA受容体のCa2+透過性の変化による緩徐進行性の神経細胞死を引き起こすコンディショナルADAR2ノックアウトマウス(AR2)では、神経細胞核のnucleophagosome様核内空胞が形成され、両者の分子連関を解明するための良いツールであると考えられる。AR2マウス運動ニューロンでは、未編集型GluA2の発現によるCa2+透過性AMPA受容体が発現しており早期から運動ニューロン死が進行するが、ヘテロ接合体AR2(AR2H)マウスではホモ接合体AR2マウスに比べ未編集型GluA2発現割合は遙かに低く、しかも緩徐な神経細胞死をもたらすため核内空胞の形成の観察に適している。AR2Hマウスについて週齢を追って核内空胞の出現頻度をみると、5週齢で既に半数の運動ニューロンに観察され、1歳齢までは変化が見られないが、1歳齢以降徐々にその数が減少していくものの、2歳齢でも観察されることが明らかになった。また、超微形態の観察から、この核内構造物には限界膜がなく、空胞内にも電子密度の高い構造物は観察されず、構造物のない空胞であることが明らかになった。ただし、核内空胞は週齢と共に大きさを増し、2歳齢では核の大部分を占める程に成長していた。また、ADAR2を缺損しながら編集型GluA2を発現するAR2resマウスのADAR2 欠損運動ニューロンにはこの核内空胞が観察されないことから、核内空胞の形成は、ADAR2 欠損自体ではなく専らAMPA受容体からのCa2+流入増加がもたらしたものであることが明らかになった。今後、細胞内Ca2+濃度上昇に伴う分子変化に着目して検討を進める。
2: おおむね順調に進展している
RNA編集酵素ADAR2 のコンディショナルノックアウトマウス(AR2)に観察される核内空胞の形態観察を行い、これが慢性の細胞内カルシウム濃度上昇に伴う変化であることを明らかにした。AR2マウスは慢性のカルシウム毒性によるニューロン死の初めての動物モデルであり、この核内空胞は従来観察されていなかったものである。カルシウムシグナリング異常が想定されている神経変性疾患の病因研究にとって、この核内空胞の形成メカニズムの解析は大いに役立つと考えられる。
今回の検討から、核質と細胞質の物質輸送の障害が、過剰な細胞質カルシウム濃度上昇によりもたらされたと考えられる。核膜には顕著な形態的変化が観察されないのに対し、核質の空胞化が著明であることから、これは核膜の物質通過を制御しているNuclear pore complex (NPC)の機能に異常を来したためと考えられる。細胞質Ca2+濃度上昇がどの様な機序によりNPCの機能異常を引き起こすかを検討する。
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