公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1. Ctm-KO マウス及びSCA6 KI マウス小脳Ca2+ナノドメイン異常の検索候補分子のうち、カルシウム依存性Kチャネル(BKチャネル、SKチャネル)、RIMBPなどについて免疫沈降法やイムノブロットによりその発現の検索をすすめるとともに、SKチャネルの活性化薬CHZの投与により失調が改善できるかどうかを検討した。その結果、CtmKOマウス脳においてRIMBPとCav2.1の相互作用が著明に減弱していることを見出した。一方BKチャネル、SKチャネルに関しては変異マウスと野生型マウスの間で明らかな発現異常・相互作用の変化は認められず、またCHZ投与による協調運動障害の改善も認められなかった。これらの結果は、episodic ataxia type2のモデルマウスとされるtotteringマウスの結果とは異なるものであり、Cav2.1 C末端領域の協調運動障害には他の要因が関与しているものと考えられた。2. Ctm-KOマウス小脳由来mRNAを用いたマイクロアレイ解析Ctm-KOマウス及びコントロールマウス小脳よりトータルRNAを抽出し、Affymetrix GeneChipアレイを用いたトランスクリプトーム解析を行なった。野生型コントロールと比較して319遺伝子の発現亢進、28遺伝子の発現低下を認め、その多くについてqPCRにて発現変化を確認できた。Sca6-118Qマウス小脳の遺伝子発現解析との比較したところ、Ctm-KOマウスとSca6 118Qマウスで共通して認められた変化は2遺伝子のみであった。以上の結果はSCA6においてC末端領域のloss of functionが病態に関与している可能性は低く、またC末端領域断片が直接転写活性を担っている可能性も低いものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
Ctm-KOマウス小脳プルキンエ細胞の発火パターンの解析はまだ緒についたばかりであるが、小脳Ca2+ナノドメインの検索、Ctm-KOマウス小脳の網羅的遺伝子発現解析などから、いわゆるCav2.1 C末端の転写因子仮説やカルシウム依存性Kチャネルの失調病態への関与について、重要な知見を得るとともに、RIMBP-Cav2.1間の相互作用が著明に低下していることが確認できた。
Cav2.1-RIMBP間の相互作用の機能的意義はプレシナプスではCav2.1 の局在に関与することが従来報告されているが、我々のこれまでの電気生理学的・組織学的解析ではCtm-KOマウスにおける平行線維・プルキンエ細胞間のプレシナプスの異常は否定的であった。そこで今後は小脳プルキンエ細胞の発火パターンやプルキンエ細胞-小脳深部核の神経伝達の検討を行なうとともに、Cav2,1-RIMBP間の相互作用のこれら領域での意義や他のインタラクトームの変化についてその解明を目指した研究をCtm-KOマウス脳を材料とした生化学的検討を中心にすすめていく。
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