公募研究
精神疾患のような神経回路に関連する疾患のメカニズムを知るためには、ニューロン同士の繋がりであるシナプスの特性がどのような分子メカニズムで決定されているかを知らなければならない。ヒトはシナプスを洗練された位置に配置し、一生の間維持し、かつ学習や経験によって可塑的に変化させる。これらをコントロールするタンパク質をショウジョウバエの視覚神経系をモデルとして発見することをまず第一目的として研究を進めた。特に、シナプス可塑性の異常の原因を遺伝子レベルで解明するために、シナプス可塑性を光学顕微鏡で簡便に観察できる系を開発した。この系を利用し、シグナル分子WNTとその下流シグナル伝達経路がシナプス可塑性をコントロールしていることを同定した。このシグナル分子の詳細な作動機序を解析した結果、後シナプス細胞が興奮した状態だとWNTの分泌が促進され、前シナプスの活性部位の微小管網を安定化させることが分かった。そのことが、活性部位構成タンパク質の入れ替えを抑制し、シナプスの数は一定に保たれる。逆に光を長時間当てた場合、後シナプス細胞の興奮は抑えられ、WNTが出なくなることにより、前シナプスの活性部位の再構成が促進し、シナプスの数が減少する。この結果は、“Molecular remodeling of the presynaptic active zone of Drosophila photoreceptors via activity-dependent feedback.”という論文にまとめられ、Neuron誌に受理された。このシナプス可塑性の機能は、過剰な神経の興奮伝達を抑制するために働いていると考えられるため、過度の興奮から引き起こされる神経細胞死、ひいては異常タンパク質の蓄積による神経変性死に対して抑制効果があるかを調べている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuron
巻: 86 ページ: 1-15
10.1016/j.neuron.2015.03.046