公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1.片側の線条体(被殻および尾状核)にCreリコンビナーゼを発現する逆行性LVベクター(LV-Cre)を、両側の黒質(外側部および内側部)にドーパミンニューロン変性を誘導するα-synuclein遺伝子(A53T変異)を組み込んだloxP配列搭載AAVベクター(AAV-LSL/FLEX-α-syn)を注入し、パーキンソン病モデルザル(α-synucleinモデル)を開発した。このようなα-synucleinモデルでは、LV-Cre注入側に対応する上下肢にパーキンソン病様の行動障害が誘発され、手の使用頻度の低下などが観察された。また、ドーパミン合成に関わるチロシン水酸化酵素(TH)の免疫染色をおこなった結果、LV-Creを注入した半球の線条体および黒質においてTHレベルの減弱が確認されるとともに、残存している線条体のTH陽性線維の中にリン酸化α-synucleinの凝集体が検出された。本研究の結果はα-synucleinの過剰発現によるドーパミンニューロンの変性・脱落をサーキット選択的に誘導できることを示している。2.逆行性感染型レンチウイルスベクターとテトラサイクリン誘導性転写制御システムを組み合わせて、神経路選択的にドーパミン神経伝達を抑制したモデルザルの作製に成功した。本実験系では、導入遺伝子としてテトラサイクリン応答プロモータの下流にテタヌストキシン軽鎖遺伝子を挿入した逆行性感染型レンチウイルスベクターを線条体に、テトラサイクリン応答因子を発現するアデノ随伴ウイルスベクターを黒質に注入した。このようなサルにおける行動変化を採餌タスクなどの行動学的指標を用いて解析した結果、ドキシサイクリン誘導的かつ可逆的にパーキンソン病様の運動障害が誘発されることを確認した。このような運動障害は緩徐に進行し、また、ドキシサイクリンの投与期間中に機能回復は観察されなかった。
2: おおむね順調に進展している
Cre-loxPシステムを利用したパーキンソン病モデルザルの作出およびTet-Onシステムを利用したパーキンソン病モデルザルの作出は、平成25年度における研究実施計画の主要項目であり、それぞれ「研究実績の概要」の1と2に記載したとおり当初の目標を達成することができたため。
今後は、「研究実績の概要」に記載した結果を発展させて、ドーパミン神経路選択的な活動阻害と運動・認知障害の発現との関係を詳細に解析し、パーキンソン病のサーキットパソロジーの解明を目指した研究を進める予定である。具体的には、飼育ケージ内で運動機能と認知機能を分離して評価できるような行動課題(3X3採餌選択課題)を訓練したサルにおいて、「研究実績の概要」の1,2と同様のベクター注入をおこない、黒質の外側部から被殻の後方部に投射するドーパミン神経路と、黒質の内側部から被殻の前方部や尾状核に投射するドーパミン神経路をそれぞれ選択的に除去したα-synucleinモデルを作出し、運動機能と認知機能の障害の程度を行動学的に解析する予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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