公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
アルツハイマー病等の神経疾患におけるシナプス病変の機構解明に際しては、シナプスの分子構築と各シナプス関連タンパク質の動態を理解し、それらに対する変異分子の作用を明らかにすることが重要である。シナプス後膜内外のグルタミン酸受容体分子を高時間・空間分解能で可視化する新実験手法を確立し、シナプス可塑性の代表例である海馬の長期増強に際して、異なるサブタイプのAMPA型グルタミン酸受容体が、各々独自の動態変化を示すことはすでに報告した。しかしながら、受容体の制御に関して、エキソサイトーシスと対をなすエンドサイトーシスの定量的評価は行えていない。そこで本研究では、シナプス後膜内外でのAMPA型グルタミン酸受容体の個々のエンドサイトーシスを同定して、定量的に評価する実験方法を確立することをめざしている。そして、NMDA型グルタミン酸受容体についても同様の解析を行い、さらにその上で、アルツハイマー病の病因として重要なアミロイドβを投与し、そのシナプス後膜内外でのグルタミン酸受容体動態への作用を解析することを目標とした。平成25年度の研究で、2つの方法でAMPA受容体の個々のエンドサイトーシス現象を同定する見通しが立った。一つの方法は、AMPA受容体とエンドサイトーシスに際して膜に集積・離散するクラスリン分子を異なる色の蛍光タンパク質で標識し、それらの増減を全反射顕微鏡で検出する方法である。この方法でエンドサイトーシスを検出できたが、シグナル・ノイズ比が低く、同定が困難な例もあった。そこで次に、細胞外液のpHを急速に変えることにより、細胞膜上の受容体の標識蛍光を消光し、エンドサイトーシスされた直後の受容体のみを検出する方法を開発した。この方法で、AMPA受容体のエンドサイトーシスを高感度で検出できる見通しが立った。また、蛍光標識したNMDA受容体の発現と全反射顕微鏡での動態観察も開始した。
2: おおむね順調に進展している
シナプス後膜近傍で、グルタミン酸受容体の個々のエンドサイトーシスをリアルタイム蛍光イメージングする手法を開発できた。
平成25年度に開発したイメージング手法で、シナプス可塑性時のAMPA型およびNMDA型受容体のエンドサイトーシスを検出し、その神経活動による変化を研究する。また、それらに対するアルツハイマー病関連分子であるアミロイドβの作用も調べる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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