公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
マウス胎児線条体由来の神経幹細胞/前駆細胞を損傷脊髄あるいは正常脊髄へ移植し、生着した細胞のみを選択的にセルソーターで回収し、網羅的な発現遺伝子解析を行う系を立ち上げた。この系を用いて、移植された神経幹細胞は生着環境によって発現遺伝子セットが著しく異なることを明らかにした。特に、損傷環境においては周囲の炎症性サイトカインやシグナルリガンド発現が激増しているにも関わらず、生着細胞自体の全体的な転写活性は著明に抑制され、生存系以外の分化や分泌活性は正常脊髄に移植された場合と比較して激減していた。また、損傷慢性期環境に移植された場合は、運動機能改善効果は認められなかったものの、生着細胞自体の分化は促進されており、分泌活性も正常脊髄中よりも有意に亢進していた。以上の結果は、移植細胞の修飾よりも生着環境をmanipulationすることが慢性期脊髄損傷治療には必要であることを示唆している。ただし、この解析系では、生着し分化した神経細胞は回収効率が著しく減少するという問題点が発覚したため、レーザーマイクロダイセクションを用いて生着分化した神経細胞のみを選択的に回収する手法の立ち上げを行う必要があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
レーザーマイクロダイセクションによる選択的な細胞回収、解析が可能となった点で、予定よりも順調に進行している。環境の違いによるシナプス形成の差異も明らかになっており、計画はおおむね順調と言える。
セルソーターで生着細胞を選択的に回収する方法では特定のpopulationのみしか回収できないという欠点が考えられたため、これを補う方法としてレーザーマイクロダイセクションによる生着細胞の選択的回収の手法を確立することが必須であると考えられた。そのため、現在のこの手法を用いた生着細胞の回収を試みている。現段階では1500個程度の生着細胞を回収することで、生着細胞中の発現遺伝子解析が行えることが明らかとなっているが、この解析可能細胞数を減少させ、single cell PCRレベルまで希釈することが一つの目標である。ただし、生着細胞自体はヘテロな細胞集団であるため、一定の細胞数に於ける発現遺伝子セットで比較するのか、あるいはシングルセルレベルでの比較を行うのかを決定する必要がある。また、生着環境、特に、介在ニューロンをあらかじめablationした場合としなかった場合を比較することにより、シナプス形成自体に差があるかどうかを確認し、発現遺伝子のsubtraction解析によりシナプス形成に重要な遺伝子群を抽出する。また、basoonやVGlut1/2などのシナプス関連タンパク質を免疫染色し、遺伝子レベルのみならず発現した蛋白レベルでの定量評価を行う。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
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