公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
“てんかん”は最も頻度の高い神経疾患の一つであり、根本的な病態の理解と治療法の開発が待たれている。申請者はこれまでに、家族性側頭葉てんかんの原因遺伝子産物である分泌蛋白質LGI1が膜蛋白質ADAM22/ADAM23のリガンドであり、脳内の主要な興奮性シナプス伝達を担うAMPA受容体機能を促進することを見出した。また、LGI1機能欠損(KO)マウスでは海馬シナプスのAMPA受容体機能が低下し、てんかんが必発することを見出した。本研究ではLGI1遺伝子変異が1)シナプス伝達異常と2)神経回路異常をもたらす分子過程を明らかにして、てんかんの病態解明を目指すと共に、3)見出した分子病態に基づく新たなてんかん治療戦略を探索することを目的とする。今年度は、当初の研究計画を着実に遂行し、下記のような成果を得た。1)LGI1分子異常がシナプス伝達異常をもたらす分子過程:前年度までにヒトLGI1変異の大半が細胞内で(主にER内で)輸送障害をうけて分泌不全となっていることを見出した。今年度は化学シャペロンによりLGI1の輸送障害が改善されることを見出した。2) LGI1分子異常が神経回路異常をもたらす分子過程:LGI1ノックアウトマウスにおいて、海馬歯状回のAMPA受容体が特異的に減少していることを見出した(Ohkawa et al, J Neurosci, 2013)。また、細胞種特異的にLGI1を発現させることに成功し、LGI1機能異常によって生じるてんかんの責任神経細胞を同定しつつある。3) 新しいてんかん分子病態に基づく新たな治療戦略の探索:ヒトLGI1変異モデルマウスを用いた解析から、LGI1構造改善を介した治療効果を検討した(査読実験中)。
2: おおむね順調に進展している
以下のように計画どおり研究が進捗しているため。1)化学シャペロンによりLGI1の輸送障害が改善されることを見出した。2)LGI1ノックアウトマウスにおいて、海馬歯状回のAMPA受容体が特異的に減少していることを見出した(Ohkawa et al, J Neurosci, 2013)。3)ヒトLGI1変異モデルマウスを用いた解析から、LGI1構造改善を介した治療効果を検討した。
1)LGI1とADAM22との結合阻害がどのようにしてAMPA受容体機能の低下を引き起こすかを分子レベルで解明する。2)同定しつつあるてんかん責任回路におけるAMPA受容体機能を電気生理学的手法を用いて評価し、論文として成果を発表する。3) 新しいてんかん分子病態に基づく新たな治療戦略に向けたシーズを得る。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 備考 (5件)
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http://f1000.com/prime/718175488#recommendations
http://f1000.com/prime/718042748?bd=1&ui=21748