公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
今年度は、アルツハイマー病(AD)に蓄積するタウについて、3Rタウ特異抗体(RD3)、4Rタウ特異抗体(RD4)、新規4Rタウ特異抗体(anti-4R)等を用いてタウの翻訳後修飾、構造についての検討を行った。様々な認知症患者脳に蓄積するタウの解析を行った際、ADに蓄積するタウに対するRD4の反応性が、他の疾患(CBDやPSP)に比べて弱いことに気がついた。以前の蛋白化学解析において、RD4抗体のエピトープ内のN279(279番目のアスパラギン)に脱アミド化を検出していたことから、脱アミド化と抗体の反応性を検討した結果、N279の脱アミド化により、RD4の反応性が消失することが判明した。これをさらに確認するため、アスパラギン酸に置換した合成ペプチドを免疫して抗体を作製した。得られた抗体はN279の脱アミド化に関係なく、4Rタウを特異的に認識し、ADに蓄積するタウに対しても強い反応性が確認された。この結果から、ADに蓄積する4Rタウは、N279が高度に脱アミド化を起こしていること、CBDやPSPなどの4Rタウだけが蓄積する疾患においては、N279の脱アミド化の程度は低いことが示唆された。さらにADに蓄積するタウをプロテアーゼ処理し、プロテアーゼに対する抵抗性と感受性から、線維化しているタウの中心構造を解析した結果、ADでは、3Rタウと4Rタウが、その微小管結合領域を介してアンチパラレルのアミロイド様構造を形成していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
患者脳に蓄積する異常タンパク質の解析として、今年度はAD、CBD、PSP患者脳に蓄積するタウの解析を行い、疾患により構造の異なるタウがシードとなり、その特徴的病理を形成していることが示唆された。レビー小体型認知症(DLB)や多系統萎縮症(MSA)患者に出現する病理構造物の主要構成成分であるαシヌクレインについても同様の解析が可能であり、現在生化学的な違いについて解析を行っている。
FTLD/ALSに蓄積する異常TDP-43について、シード導入培養細胞モデルを用いて、その異常構造が新しい異常タンパク質にも受け継がれることを証明した。そこで、タウ、αシヌクレインについても、この実験と同じように、正常タウ、αシヌクレインを発現させた培養細胞内に患者脳由来の異常タンパク質を凝集シードとして導入し、蓄積がおこるかどうか、その異常構造は導入したシードと同じ構造をとるかなどについて、免疫組織染色、イムノブロットなどで解析を進める。また、ワクチン療法や異常リン酸化部位に対する抗体療法について、線維化αシヌクレイン接種マウスを用いてその効果を検討する。投与後、血中において抗原に対する抗体価の上昇がみられるか、マウスの症状の改善や異常タンパク質の広がり、蓄積の減少がみられるか、などについて検討する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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