公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
これまでに、母体の妊娠前~離乳までの高脂肪食摂取は、幼若期産仔海馬で酸化脂質の蓄積と神経新生低下、BDNF値低下、樹状突起分岐不全、記憶学習の低下を誘導することをマウスで見いだした。そこで、当該の影響がシナプス後部構造であるスパインを中心とした脳の微細形態とその動態にどのような影響を及ぼすかを、マウス個体レベルで明らかにすることにした。具体的に、離乳後も産仔で高脂肪食摂取を継続した場合、または離乳後は通常食を摂取した場合、それぞれにおけるスパインへの影響を検討した。用いた研究手法はin vivo 2光子イメージング等による機能形態学的解析である。マウスはThy1-YFPマウスなどを使用した。H23, H24年度の当該領域における研究では離乳後も高脂肪食摂取を継続した産仔マウスのみならず、離乳後通常食を摂取した産仔マウスにおいても、週齢を重ねるごとに、前頭皮質において樹状突起スパインの数が減少し、またスパインの成熟遅延が見いだされることを示した。今年度は海馬、前頭前野ではスパイン分類比率には差は生じるものの前頭皮質と異なりスパイン密度については有意な差が見いだされないことを明らかにした。さらに昨年度の培養細胞を用いた実験結果を確定し、論文を作成、投稿した。これまでの迷路学習試験では成長後記憶学習能の変化は消失することが判明しているが、今年度までの結果は、母体の高脂肪食摂取による影響が、病状(表現型)の検出には至らないまでも、スパインにおいて継続し、潜在的な神経機能異常が残存していることを示唆する。また関連して、母体への当帰芍薬散投与が胎盤発達遺伝子、トランスポーター遺伝子の発現に作用し胎仔の成育に影響する可能性を論文報告した。また、食事により脳内不飽和脂肪酸ω3/ω6が変動し、情動記憶に影響することをマウスで明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
母体の高脂肪食摂と産仔の脳機能形態学的変化の相関性解析について熟練を必要とする2光子レーザー顕微鏡を用いた解析技術が確立し、進展が認められた。前頭皮質に与える影響と海馬に与える影響に差を見いだすなど新規の発見も行われた。
母体の高脂肪食摂が産仔の脳機能形態学的変化を遷延的に惹起することを見いだしたので、この変化が行動や疾患罹患性にどのように影響するかを明らかにする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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