研究領域 | シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成 |
研究課題/領域番号 |
25110740
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
一戸 紀孝 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 部長 (00250598)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | シナプス / 霊長類 / 自費症 / プルーニング / 発達障害 |
研究概要 |
私たちは、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)を用いて、ヒトを含む霊長類に特有の大脳皮質のシナプス形成様式“Overshoot-type”シナプス形成に関するメカニズムと、その障害について検討している。マーモセットの6領野(前頭葉12野、下側頭葉、V1, 内側前頭葉8B//9野、24野、14野)の3層の基底樹状突起の発達に関して報告した。概略を述べると、どの領野も生後3ヶ月ほどでシナプスを示すスパインがピークに達し、生後6ヶ月、成体と減少して行き、マーモセットも他の霊長類と同様に”Overshoot-type”の、スパイン(シナプス)形成を示すことを示した。pruning期の最初の部分に焦点をあてて、3ヶ月齢と6ヶ月齢の12野、下側頭葉、V1の各領野をジーンチップで調べた。(1)Axon Guidance Signalingに属する3ヶ月齢と6ヶ月齢で統計的に異なっている遺伝子がが、実際に異なっているいる確率がトップであった。(2)Axon Guidance Signalingは、いくつかのsub-pathwayに分かれるが、そのほとんどが、シナプスが減少するような、一貫した変化を見せた。(3)Pruningする際に、シナプスを呑食すると考えられるmicrogliaの活性を示すAIF1や、microgliaの活性を上昇させるような遺伝子は、6ヶ月で3ヶ月より低下しており、ミクログリアの活性で、シナプスの減少を説明できないことが分かった。(4)ミクログリアにより呑食されるシナプスを決めるtag因子である補体系、抗体系、HLA系は6ヶ月発現の上昇を見せ、むしろこのミクログリアのためのtag因子が、”overshoot-type”のpruningを決めている可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りの研究により、シナプスの増減のピークがどの領野でも同じく3ヶ月でピークに到達する事を示す事に成功した。また、6ヶ月へ向けて減少が起こるが、3ヶ月でのジーンチップの結果、6ヶ月でのジーンチップの結果を検討して、この減少の可能性を示す遺伝子を大量に得る事ができた。これらをさらに、免疫組織化学等でも調べ、ミクログリアの活動を示す指標の減少が得られルト同時に、3ヶ月で、スパインとミクログリアの突起が絡み合っている事が示された。同時に並行して、作成している自閉症のモデルのジーンチップ解析の進行が順調にすすんでいる。また、このマーモセット自閉症モデルが、どれだけヒトの自閉症に近いかの研究も進んでいる。予定上そうであったが、ジーンチップの数が、統計的な研究に沿うほどまでには、とれていないという問題がある。この点に関して、母群を増やして、モデル動物、コントロール動物の作成の効率を高めて行きたい。これを用いて、自閉症薬の作成へ向かっていく体制ができつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、作成中のバルプロ酸の母体投与による仔の自閉症様症状をより、正確に評価するとともに、そのシナプスの変化および遺伝子発現の変化の研究を正確に行って行きたい。また、遺伝子の変化、プルーニング関連遺伝子との関係性を、統計的に行えるレベルまで引き上げたい。また、その結果を用いて、疾患治療薬の生成を行いたい。そのためにも、母群を増やし、治療効果をみれるだけの、モデル動物の数を確保したい。薬物も、初期のシナプス増大期用、後期のシナプス減少期用の薬物の候補を作成したい。これらのテストをするために、パスウェイ解析、カルチャーシステム、DTIなどのイメージング、行動バッテリーの検討をして行きたい。また、障害の本質的な脳部位または結合をしらべるための、正常動物の脳障害を作成し、それによって、同様な自閉症様モデルが作成可能かどうかについて、検討したい。遺伝子のPATHWAY解析などから、BBB透過性の薬物の可能性を追求したいと考えている。
|