公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
イハラてんかんラット(IER)は、生後3ヶ月からてんかん症状を呈し約一年で死に至る原因不明の自然発症ラット突然変異体である。生後から社会行動異常や記憶障害などを伴うために、「精神発達遅滞を伴うヒトてんかん」の良いモデルであると考えられて来たが、その発症機構や原因遺伝子は全く解明されていなかった。本研究では、IERにおいててんかんが発症するメカニズムとその原因遺伝子を探索し、さらにその遺伝子の機能を明らかにすることによって、ヒト疾患の病態の理解に迫ることを目的とした。我々は、これまでにIERの原因遺伝子を同定し、その遺伝子産物が、神経突起伸長促進作用、および分子間相互反発を介した神経突起束化抑制作用と細胞間隔保持作用によって、神経回路網形成(特に抑制神経回路系)に関与し、てんかん発症の抑制に役立っていることを明らかにしてきた。また、国立精神神経医療研究センターの「精神遅滞・てんかんリサーチリソース」からこの原因遺伝子の異常によって引き起こされるてんかん症例のスクリーニングに着手した。さらにIERの表現型解析、ヒト疾患のスクリーニング、およりこの原因遺伝子のファミリー遺伝子の解析、なども精力的に進めている。本研究が、ヒトの精神発達遅滞やてんかんの発症・病態進展機構の理解につながるのではないかと願っている。さらにIERをモデル動物として利用することによって、将来的な診断法や治療法の開発に繋がるように研究を継続していきたい。
2: おおむね順調に進展している
IERの原因遺伝子Epi-IERを確定できたこと。Epi-IERのゲノム上における一塩基置換が原因となってスプライシング異常を引き起こしていることが、IERの原因であることを明らかにしたこと。Epi-IERの原因遺伝子産物が、神経突起伸長促進作用、および分子間相互反発を介した神経突起束化抑制作用と細胞間隔保持作用によって、神経回路網形成(特に抑制神経回路系)に関与するということを明らかにしたこと。そしてその働きが、結果としててんかん発症の抑制に役立っていると明らかにしたこと。ヒト疾患の探索のために、精神遅滞リサーチリソースの症例のスクリーニングを開始したこと。以上から、初年度としては予定通りである。
IERの電気生理学的解析を行い、脳神経系にどのような機能異常があるのかを調べ、精神遅滞やてんかん様症状がいかにして招来されるのかを明らかにする。国立精神神経医療研究センターの400家系600症例におよぶ「精神遅滞リサーチリソース」を全てスクリーニングし、Epi-IER遺伝子の異常によるヒト精神遅滞やてんかんの症例の同定に努める。また、Epi-IERのファミリー遺伝子の機能についての解析も行う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 111 ページ: 2194-2199
10.1073/pnas.1308418111
Nat Commun
巻: 5,3337 ページ: 1-13
10.1038/ncomms4337
Gene Expr Patterns
巻: 15 ページ: 1-7
10.1016/j.gep.2014.02.001
J Neurosci
巻: 34 ページ: 4786-4800
10.1523/JNEUROSCI.2722-13.2014
Curr Biol
巻: 23 ページ: 739-745
10.1016/j.cub.2013.03.041
Dev Biol
巻: 381 ページ: 401-410
10.1016/j.ydbio.2013.06.022
Cereb Cortex
巻: 23 ページ: 2293-2308
10.1093/cercor/bhs221
http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_diag/index.html