CD8+ T細胞選択に及ぼすプロテアソームの影響を検討する目的で、胸腺においてβ5ファミリーサブユニットの発現バリエーションを示す6種類の遺伝子改変マウス(β5t-/-、β5i-/-、β5i-/-β5t-/-、β5t-transgenic(Tg)、β5i+/-β5t-Tg、β5i-/-β5t-Tg)、及びコントロールC57BL/6野生型マウス(wild type: WT)を用い、解析を行った。その結果、β5t-/-マウスでは、既報のとおりCD8+ T細胞の減少、CD4/8比の上昇を認め、β5i-/-マウスでは目立った変化を認めなかった。皮質と髄質に発現するプロテアソームサブユニットが一部で重複すると推定されるβ5t-Tg及びβ5i+/-β5t-Tgマウスでは、CD4/8比のわずかな上昇を認めた。皮質と髄質で同一のプロテアソームサブユニットを発現すると推定されるβ5i-/-β5t-/-、β5i-/-β5t-Tg では、顕著なCD8+ T細胞の減少、CD4/8比の上昇を認めた。CD8+ T細胞の減少が見られた系統では、CD8+ T細胞においてTCR-βの発現低下を認めた。 胸腺内では多様な触媒活性を有するプロテアソームが多段階的にT細胞レパートリーの形成に関与していると考えられる。これまでの研究により、β5t依存性の自己ペプチド産生がCD8+T細胞の正の選択に重要であることが示されている。一方で,髄質ではβ5iが発現しており、胸腺の正の選択と負の選択に提示されるMHC class I/ペプチド複合体には相違があると考えられる。今回の検討により、皮質と髄質に発現するβ5サブユニットが同一の遺伝子改変マウスでCD8+ T細胞の減少を認めたことから、CD8+ T細胞の分化において皮質と髄質で発現するβ5サブユニットに相違があることも生理的に重要であると考えられた。
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