研究領域 | 免疫四次元空間ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
25111502
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和田 はるか 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 講師 (70392181)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / 移植 / 免疫制御 / 免疫抑制 / 免疫寛容 / 分化誘導 |
研究概要 |
近未来の医療として考えられていた多能性幹細胞(PSC)を用いた再生医療はもはや現実のものとなってきている。そこで私たちは、PSCを用いる新時代移植医療において効果を発揮する免疫制御法の開発を目指し研究を行っている。 これまでに私たちは、マウスPSCからFoxp3陽性制御性T細胞やCD11c+でiNOSを高発現するマクロファージ様免疫抑制性細胞を含む様々な免疫系細胞の誘導が可能であることを示してきた。PSCを用いる新時代移植医療を想定し、ES細胞から拍動性心筋様細胞を誘導してアロにあたるマウスに移植するマウスモデルを確立した。このとき誘導心筋と同じES細胞から誘導しておいたマクロファージ様免疫抑制性細胞を並行投与することで、無治療対照群と比べて移植片の生着期間を有意に延長させることに成功した。 PSCとしてiPS細胞を用いた移植医療を想定した研究も進めている。マウス線維芽細胞からiPS細胞を作製し、当iPS細胞から、マクロファージ様の表現型をもつ免疫抑制性細胞(iPS-SC)の誘導に成功した。iPS-SCはアロ刺激によるT細胞増殖を抑制する効果を有していた。 また、ヒトへの応用を見据えた前臨床研究に適用する目的で、コモンマーモセットES細胞から免疫抑制性細胞の誘導も試みた。当初、マウスPSCからマクロファージ様免疫抑制性細胞を誘導するプロトコールにて分化誘導を試みたが、目的とするような細胞は得られなかった。分化誘導時に添加する因子を検討したところ、物質Aを培養系に添加することにより、免疫抑制性細胞(CMES-SC)の誘導に成功した。細胞表面マーカーとしては、CD11bをはじめとするマクロファージに特徴的な分子を発現していた。CMES-SCは、マウス系におけるアロ刺激によるT細胞増殖を抑制する効果を有していた。 さらに、免疫寛容誘導を目的とし、胸腺上皮細胞の誘導についても検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、多能性幹細胞を用いる新時代移植医療において効果を発揮する免疫制御法の開発を目指して行なっている。 これまでに、マウスES細胞系にて免疫制御の可能性を有する免疫抑制性細胞の分化誘導法を確立してきたが、マウスiPS細胞からも類似の細胞を誘導可能であることが確認できた。また、前臨床研究を目的として、コモンマーモセットES細胞からの免疫抑制性細胞の分化誘導法も独自のプロトコールを確立するなど、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、マウスiPS細胞にて免疫抑制性細胞の分化誘導を確立した。in vitroにて免疫抑制能を有することが既に確認できている。下記の研究を総合的に行なうことで、多能性幹細胞を用いる新時代移植医療において真に効果を発揮する免疫制御法の開発を目指したい。 1.in vivoにおけるアロ移植モデルにおける免疫抑制能の解析、当該免疫抑制細胞を投与されたマウスにおける3rd party細胞に対する免疫反応性に関する検討を行なう。また、当該細胞の免疫抑制機序についても検討する。 2.コモンマーモセットES細胞(CMES細胞)を用いた実験系においては、CMES-SC細胞がアロマーモセット抗原提示細胞により刺激されたT細胞増殖を抑止する効果があるかどうかをin vitroにて確認する。また、免疫抑制機序の詳細についても解析を行う。 3.中枢性寛容の誘導を目指し、マウスES/iPS細胞、およびコモンマーモセットES細胞から胸腺上皮細胞の誘導を試みる。誘導できた細胞は、各種遺伝子発現をqPCRにて、またCytokeratin-5、Cytokeratin 8等のたんぱく質発現を免疫染色などにより確認する。生成した細胞をヌードマウス等に移植し、T細胞の分化誘導に寄与するかどうか、中枢性寛容に寄与するかどうかについても検討する。 4.中枢性寛容の誘導において、T前駆細胞由来抗原提示細胞に着目している。そこで、T前駆細胞由来抗原提示細胞の役割について、in vitro、in vivoの両面から解析を進める。
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