1.マウスiPS細胞由来移植片および免疫抑制性細胞を用いたアロ臓器移植/移植制御系の確立 マウスiPS細胞由来免疫抑制性細胞(iPS-SCs)の誘導に成功した。iPS-SCsはマクロファージ様の特徴を有しており、アロ刺激によるT細胞の増殖反応を抑制する効果を有していた。当効果は、NO依存的であることを明らかにした。iPS-SCs投与による免疫制御により、同iPS細胞から誘導した心筋様細胞のアロ移植系における生着期間を延長させることに成功した。さらに、アロ移植片移植を受けたマウス個体においてiPS-SCs治療を施した場合には、アロ移植片反応性の抗体産生が顕著に抑制されていた。これらの結果から、同一の多能性幹細胞から移植片と平行して有用細胞(免疫抑制性細胞)も誘導し、その投与により移植片に対する免疫制御を達成するというコンセプトの有用性が示された。
2.コモンマーモセットES細胞を用いての検討 前臨床研究を意識した検討としてコモンマーモセットES細胞から、免疫抑制性マクロファージ様細胞を誘導する方法を確立した。分化誘導にあたっては、マウスと同様の方法ではうまくいかなかったが、各種低分子化合物のスクリーニングを経て、エピゲノム制御因子を修飾する低分子化合物の添加により、最終的に免疫抑制性細胞を得ることができた。当該細胞はコモンマーモセットにおけるアロT細胞抑制能を有することをin vitroで確認しており、私たちの提唱するコンセプトを非ヒト霊長類動物モデルにて検証する基盤を整えた。
3.ヒトiPS細胞由来免疫制御細胞の誘導および評価 ヒトiPS細胞からの免疫抑制性細胞誘導に対して独自の分化プロトコールを開発し、マウスES/iPS細胞から誘導したのと類似の免疫抑制性細胞の誘導に成功した。リアルタイムPCR等で免疫抑制性の分子の発現を確認した。
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