研究領域 | 免疫四次元空間ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
25111511
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
亀谷 美恵 東海大学, 医学部, 講師 (50338787)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トロフォブラスト / コモンマーモセット / 妊娠免疫 / 胎盤 |
研究概要 |
実績の概要: 今年度は胎盤トロフォブラストの調製法の確立、CD56特異的モノクローナル抗体の作製といった基盤整備に加え、胎盤血、臍帯血、脱落膜、絨毛組織を用いてヒト・マーモセット間の共通の性質を、実験動物中央研究所で採取されたマーモセット胎盤と東海大学病院産婦人科にて採取した胎盤を用いて検索した。それにより以下の結果を得た。(1)マーモセット胎盤の組織化学的解析:胎盤組織を抗GFP抗体および抗ヒトHLA抗体で染色する事により、母体と胎仔の組織の識別が可能となった。これに加えて、トロフォブラストに発現する分子として、TrkBの解析を行い、この分子がヒト・マーモセット間でcDNAレベルで95%のホモロジーを持つ事、マーモセット絨毛組織にもTrkBタンパク質が発現する事を明らかにした。(2)マーモセット脱落膜中のリンパ球の解析:マーモセット脱落膜よりコラゲナーゼ処理によりリンパ球を採取し、フローサイトメトリーによりリンパ球各画分の割合を明らかにした。これに加えて、絨毛組織、胎盤血、臍帯血についても同様の解析を行い、胎盤組織においてヒト同様休止期CD4T細胞の割合が低い事を明らかにした。(3)in cilicoでのヒト胎盤発現遺伝子の解析については、一部データ解析を行い、TrkB, HLA-Gの発現等がトロフォブラストで亢進する事を確認した。さらに、マーモセットの主要組織適合性抗原については共同研究者である椎名等とともにHLA-GオーソログであるCaja-G遺伝子構造を明らかにした。これにより、HLA-Gオーソログのマーモセットモノクローナル抗体を作製するための情報が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究においては、研究計画に特に記述をしていなかった胎盤トロフォブラストの調製法の確立、CD56特異的モノクローナル抗体の作製といった基盤整備や、脱落膜のみならず胎盤血、臍帯血、絨毛組織を用いてヒト・マーモセット間の共通の性質の解明を行った上で、研究実績が異様に示した結果を得ている。 (1) 上皮間葉転換に関連した分子としては、腫瘍との関連性が明らかになっており、膜表面に発現する受容体型チロシンキナーゼであるTrkBをトロフォブラストマーカーとして精製等に用いる事が可能であり、胎盤の浸潤に関連する上皮間葉転換の指標ともなる事が明らかとなった。これは研究計画を大きく進展させる結果となった。(2) 妊娠免疫に関連した分子としてHLA-Gオーソログを選択し、この分子の遺伝子構造を共同研究者らと明らかにした。さらに、ヒト胎盤で先行して、抗HLA-G抗体を用いて、この分子が胎盤血や脱落膜に存在するCD4+細胞に発現する事を明らかにした。マーモセット胎盤においても類似の細胞を認めたが、HLA-G抗体の特異性に十分な信頼性がない為、HLA-Gオーソログに対するモノクローナル抗体作製に着手した。これらの結果は、研究計画にはない研究の進展により得られたものである。(3) 既に培養系や妊娠CB-NOGマウスの作製等についても手がけており、パイロット実験による方向修正の見通し等が立っている。(4) 一方、VT, EVT発現プロファイルについては、両細胞の精製法を検討中であり、完全に精製した標品を得るにはもう少し時間が必要である。 これらの研究を総合して考えると、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、ほぼ予定通りに研究が進んでいる。今年度は、マーモセットおよびヒトトロフォブラストおよびリンパ球の精製法が確立し、培養が可能となった事から、in vitroでの両者の相互作用について上皮間葉転換遺伝子発現、各種サイトカイン等免疫関連遺伝子発現の解析を行う。以下の点のみに変更を行う。 (1)胎盤の浸潤に関連する上皮間葉転換関連分子として、TrkBが胎盤絨毛に発現し、ヒトとのホモロジーが95%あることからヒト抗体が使用可能である事が明らかとなった。このため、TrkBは精製や共培養、また、免疫との相互作用の指標として優れていると考えられる。そこで発現アレイによる全般的な遺伝子探索を行う必要がないと考えられ、むしろTrkBに関連する遺伝子発現プロファイルをin silicoで確認し、解析すべき遺伝子を決定することとする。 (2)モノクローナル抗体としては、Caja-G遺伝子が明らかになった為、最も頻度の高いハプロタイプについてモノクローナル抗体作製を行い、これを用いて共培養系の研究を行いたいと考えている。 (3)重度免疫マウスにおける妊娠免疫系再構築については、当初、臍帯血由来CD34陽性細胞を移植して用いる予定であった。しかし、パイロット実験により、臍帯血移植では免疫系再構築には時間がかかる上に不完全である為、ヒト末梢血単核球を妊娠NOGに移植し、免疫担当細胞の動態を解析する、という方法に変更する予定である。マーモセット末梢血を妊娠NOGに移植する実験系でも同様に末梢血単核球を移植する事とする。 (4)新たに、胎盤血中のCD4T細胞数が減少している事が示された事から、これらの細胞がアロ特異的活性化の後、アポトーシスを積極的に誘導されているのか、単に胎盤への移入が少ないのかについてPI, Annexin V, 7AADなどによる染色およびフローサイトメトリーを用いて解析を行う。
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