公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
記憶B細胞は主に胚中心において親和性成熟を経たB細胞から分化し、体内で長期 に生存し、再び抗原と出会うと速やかにプラズマ細胞に分化して高親和性抗体を産生する。記憶B細胞には特有のマーカーがなく、その数も僅少であるため組織染色により特定することは困難であった。よって、記憶B細胞の時空間的な動態については未だに謎である。また、記憶B細胞の分化、長期生存、免疫応答に関わる因子や、微小環境についても不明である。私たちが構築した培養系で増殖させたIgG1+/IgE+の胚中心様B細胞 (iGB細胞)をマウスに移入するとIgG1+の記憶B細胞(iMB細胞)に分化し、脾臓では辺縁洞付近に局在し、長期に生存する。この実験系を利用し、記憶B細胞の分化、遊走・局在、生存、 応答の制御に関わる分子を同定し、それらのリガンドを発現する支持細胞を同定することにより、記憶B 細胞の時空間的動態を制御する微小環境の実体を明らかにすることを目標とした。マイクロアレイデータから記憶B細胞およびiMB細胞に選択的に発現する細胞表面蛋白の遺伝子を選び、その中から、まずgp49Bに注目した。gp49Bは記憶B細胞に加えてmarginal zone (MZ) B細胞にも発現していた。gp49B欠損マウスでは各血球系細胞の数に異常はなく、免疫後に形成される記憶B細胞の数も正常であったが、一次免疫後のIgM抗体および二次免疫後のIgMおよびIgG1抗体産生が亢進していた。In vitroの解析から、gp49BはIntegrin αvβ3と結合することによりCD40からErkを介したシグナルによるプラズマ細胞分化を抑制することが分かった。リンパ組織内でintegrin αvβ3を発現している細胞を同定するために、integrin β3に対する抗体で脾臓組織切片を染色したところ、MZおよびred pulpに多数のシグナルが検出された。他にも、記憶B細胞に選択的に発現する膜蛋白を見出しており、現在、それらを欠損するマウスを用いてその生理的機能を調べている。
2: おおむね順調に進展している
gp49Bの記憶B細胞における機能解析およびその作用機序についての解析は論文にまとめて、現在、学術誌に投稿中である。リンパ組織内でintegrin αvβ3を発現している支持細胞の同定を進めたが、integrin β3は血小板にも発現することにより、支持細胞との判別が困難であった。一方、記憶B細胞に発現する他の膜蛋白の同定と機能解析は順調に進行している。また、各アイソタイプの抗原受容体を強制発現させたiGB細胞をマウスに移入し、形成されるiMB細胞の局在を調べているが、移入細胞のマーカーの蛍光が弱く、まだ局在は明確になっていない。
integrin αvβ3に限定せず、gp49Bの生理的リガンドを探索するために、gp49Bの細胞外ドメインとIgH-Fcの融合蛋白をプローブとして、濾胞樹状細胞、間葉系細胞等のマーカーとともに組織染色を行う。その際、あらかじめCD41(αIIb)に対する抗体をマウスに投与して血小板を除去しておく(Blood 2005, 105:1956)。新たに同定した記憶B細胞に発現する膜蛋白については、その機能が記憶B細胞の生存維持あるいは応答に関わる場合は、そのリガンドを同定し、その発現部位を探索する。さらに、より強い蛍光を発するtdTomatoのtransgeneを有するマウスのB細胞から作製したiGB細胞に各アイソタイプの抗原受容体を導入し、これをマウスに移入して、その動態を解析する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
PLoS One
巻: 9 ページ: 92732
10.1371/journal.pone.0092732.
巻: 8 ページ: 80223
10.1371/journal.pone.0080223
J. Clin. Invest.
巻: 123 ページ: 5009-5022
10.1172/JCI70626