公募研究
免疫記憶を担う記憶B細胞は主に胚中心において親和性成熟を経たB細胞から分化し、体内で長期に生存し、再び抗原と出会うと速やかに形質細胞に分化して高親和性抗体を産生する。しかし、記憶B細胞がどこに局在するか、その局在・生存・応答がいかに制御されているのか等についてはほとんど分かっていない。記憶B細胞には特有のマーカーがなく、その数も僅少であるため、記憶B細胞の特性や時間的空間的な動態は未だ謎であり、記憶B細胞の分化、長期生存、免疫応答に関わる因子や、それらが起こる場である微小環境については何も分かっていない。本研究では手始めに、マイクロアレイのデータを手がかりに記憶B細胞に選択的に発現する細胞膜表面蛋白を探索した。そのうち、gp49B(Lilrb4)がB細胞のなかで記憶B細胞と辺縁帯B細胞に選択的に発現していることを見出した。gp49B欠損マウスでは免疫後に形成される記憶B細胞の数は正常であったが、一次免疫後のIgM抗体および二次免疫後のIgMおよびIgG1抗体産生が亢進していた。さらに、In vitroの解析から、gp49BはIntegrin αvβ3と結合することにより、CD40からのErkを介したシグナルによる形質細胞分化を抑制することが分かった(Fukao et al. 2014)。近年、黒崎らは記憶B細胞が形質細胞に分化しやすい状態にプログラムされていることを明らかした(Kometani et al., Immunity 39:136, 2013)。記憶B細胞の微小環境は、gp49Bを介して記憶B細胞の形質細胞分化を常に制御していて、その過度の応答を防ぐ役割を担っていると考えられる。B細胞の中で記憶B細胞に選択的に発現する膜表面蛋白として他に、gpr34, Sema4F, IL9Rを見出しており、今後はこれらの記憶B細胞における役割を解明し、さらに、これらのリガンドを発現・産生するリンパ組織内の支持細胞を探索する。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Immunology
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