公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
脾臓は血行性抗原に対する免疫応答の場として機能するだけでなく、老化赤血球の破壊や貧血時の髄外造血の場としても重要な機能をもつ。脾臓の形成や機能については、造血系およびリンパ系細胞側からの解析が進む一方で、これら細胞の機能や分化を支持するストローマ細胞、すなわち、間葉系細胞側からの脾臓微小環境の形成や機能についての解析は少なく、未解明な部分が多く残されている。そこで本研究では、脾臓器官発生のマスター制御因子であり、成体脾臓間葉系幹細胞に高発現することが報告されているホメオドメイン転写因子Tlx1発現細胞に焦点をあて、本細胞をVenusにより同定し、その分化運命をCre-loxPシステムで追跡可能な新規レポーターマウスを作成した。本レポーターマウスは、Tlx1遺伝子の開始コドンを含む第一エキソンに、Cre組換え酵素遺伝子とタモキシフェン誘導的に核内移行する変異型エストロジェン受容体遺伝子の融合遺伝子(CreERT2)ならびにires2配列を有するVenus遺伝子をノックインしてある。本マウスでは、胎齢11.5ならびに13.5日の脾臓でVenusの蛍光が認められ、脾臓原基を構成する殆どの細胞がVenus陽性であった。また、本レポーターアレルをホモで有するマウスは脾臓を欠損することから、Tlx1ならびにTlx1発現細胞が脾臓の器官形成に必須であることが確認された。さらに、本マウスをRosa26-tdTomatoレポーターマウスと交配し、妊娠マウスにタモキシフェンを投与することでCre組換え酵素を活性化させた結果、Tlx1発現細胞から分化した間葉系細胞を同定することが可能であった。現在、胎仔ならびに新生仔脾臓におけるTlx1発現細胞の線維性細網細胞、瀘胞樹状細胞、辺縁帯細網細胞、血管周囲細胞などの間葉系細胞への分化能について詳細な解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
研究班の班会議以外にも、助教、ポスドク、学生など若手の教育、交流のためのサマースクール(平成25年7月11~13日:徳島)が開催され、それが、若手研究者の研究に対する理解やモチベーションの向上に繋がり、平成25年度は、研究成果ならびにその発表とも予定を上回る成果が得られたものと考える。
脾臓欠損マウスを用いた脾臓間葉系細胞による免疫および造血ニッチ再構成系の確立Tlx1-CreER-ires2-Venusレポーターアレルをホモに有するマウスでは正常なTlx1蛋白の発現が欠損することから脾臓欠損となる。脾臓欠損マウスを移植のホストとして用いることで、血清鉄濃度の変化や血行性抗原に対する辺縁帯B細胞の抗体産生など、間葉系細胞移植による脾臓再構築の血液学的ならびに免疫学的評価が可能になる。Tlx1-CreER-ires2-Venus; Rosa26-stop-RFPマウス胎仔脾臓原基ならびに新生仔脾臓からソーティングで単離した間葉系細胞をMatrigel或はコラーゲンスポンジマトリックスに埋め込んだものを、脾臓欠損マウスの腎被膜下に移植し、経時的に血清サンプルおよび血中リンパ球の動態を検査しつつ、移植4週を目処に腎被膜下での組織再構築を免疫組織化学ならびにフローサイトメトリーで解析する。Tlx1発現間葉系細胞の形成、維持ならびに機能の転写制御機構の解明脾臓の器官形成には、Tlx1以外にも、複数の転写制御因子が関与していることが遺伝子欠損マウスの解析から明らかになっており、その中でも、Pbx1はMeis1, pKnox1と同じファミリーに属する転写因子であり、お互いに協調することで様々な細胞の分化や維持に関与することが知られている。そこで、conditionalアレルを有するMeis1flox, pKnox1floxマウスとTlx1-CreERT2-ires2-Venusマウスを交配することで、脾臓間葉系細胞特異的にMeis1, pKnox1を欠損させることのできるマウスを作製する。これらマウスの成体にタモキシフェンを投与することによって遺伝子欠損を誘導し、脾臓Tlx1発現間葉系細胞の形成や成体における維持ならびに機能の転写制御機構を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
PLOS ONE
巻: 9 ページ: e87646
10.1371/journal.pone.0087646
巻: 9 ページ: e89885
10.1371/journal.pone.0089885