研究領域 | 免疫四次元空間ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
25111514
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
岩田 誠 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (50160122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫学 / 細胞・組織 / 樹状細胞 / レチノイン酸 / 細胞分化 / 腸 / 免疫寛容 / 制御性T細胞 |
研究概要 |
腸間膜リンパ節(MLN)には、レチノイン酸(RA)合成酵素RALDH2を発現する成熟樹状細胞(DC)が存在し、腸管免疫に重要な役割を担っている。しかし、この「腸型DC」の分化誘導機序は不明である。我々は、GM-CSFとRAがこの誘導に重要な役割を持つことを示したが、GM-CSFの関与をさらに明確にするために、従来のGM-CSF受容体のβc鎖欠損マウスを用いた解析結果を踏まえ、GM-CSF欠損マウスを用いて解析した。そして、GM-CSF欠損によっても顕著にMLN-DCのRALDH2発現が低下することを見出した。 我々は、Flt3リガンドで骨髄細胞から誘導した未熟DCから腸型DCを分化誘導する条件を探索した。腸型DCのほとんどが小腸粘膜固有層由来であることを考慮して、GM-CSFとRAまたはRAを代替するRA受容体アゴニストによる刺激に加えて、DCに、小腸組織の微小環境中に存在する種々の刺激を与えて解析した。腸内細菌などがもたらすToll様受容体(TLR)刺激はDCを成熟させるだけでなく、以前に我々が示したようにGM-CSFによるRALDH2発現を増強したが、得られたDCは炎症性サイトカインを産生し、腸型DCとは異なる性質を示した。しかし、現在までに、RALDH2発現は増強するが炎症性サイトカイン産生を誘導しない成熟刺激の候補を見出しており、その確定検証を進めている。 また、RAシグナル欠乏状態でのMLN-DCの性質変化については26年度に実施する予定であったが、特定のDCサブセットの性質がRAシグナル欠乏により特に大きく変化し、IL-13とTNF-αを高産生する炎症性ヘルパーT細胞を誘導して、アレルギー炎症性疾患を誘導する可能性があることを既に見出している。この結果は、学会および論文(現在はon line出版まで)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸型DCのin vitroの誘導については、まだ、公開する段階には至っていないが、ほぼ達成できており、腸組織の免疫四次元空間におけるDCの分化の様子をほぼ再現できるようになったと考えている。また、次年度に予定していたレチノイン酸欠乏状態でのDCの分化異常と疾患の関係についても、一部結果が得られて論文がまずon lineで出版された。また、レチノイン酸合成酵素の発現誘導機構におけるレチノイン酸自体の分子作用機序についても明らかにし、論文が受理された。
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今後の研究の推進方策 |
腸関連組織特有で、レチノイン酸(RA)産生能力を持ち、抗炎症性の樹状細胞(DC)の、分化誘導とその攪乱の可能性をさらに追求する。そのために、Flt3リガンドで骨髄細胞から誘導した未熟DCから腸型DCを分化誘導する条件を、これまでに得た知見に基づき確定する。腸に存在する種々の刺激因子の中から、GM-CSFとRAまたはこれを代替するRARアゴニストによる刺激に加え、さらにTLR刺激に代わる刺激を与えて活性化、成熟させることで、高いレチノイン酸産生能を持ち、かつ炎症性サイトカインを産生しない腸型DC様細胞の分化誘導法を確立する。そして、この分化誘導法に関わる刺激が、他の免疫細胞や上皮細胞、ストローマ細胞を含む腸組織空間においてどのような時間経過で、どのような機序と役割を持ってその分化誘導に関与するのか解明する。さらに、得られた腸型DC分化誘導法を用いて、レチノイン酸欠乏を始めとする種々の攪乱要因がDCを介して免疫学的疾患の制御に影響を与える可能性を解析する。また、腸型DCをin vitroで分化誘導し、このDC自身またはこれによって誘導される制御性T細胞を、腸炎などのモデルマウス個体に養子移入することで疾患制御の可能性を検証する。
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